お帰り、シスター

勝利だギューちゃん

第1話  妹

僕は今、お墓参りをしている。

墓と言っても、普通のお墓ではない。


いわゆる「水子地蔵」と呼ばれる墓の前にいる。

ここには、この世に生まれてくることが出来なかった妹が眠っている。


母の体調を優先し、やむなくだ・・・


当時は知らなかった。後から聞かされた。


性別はわかっていた。

でも、名前はついていなかった。

そこで僕が勝手に、「ありす」と付けた。


せめて「夢の中では生きてほしい」という願いを込めた。


「じゃあ、アリス、また来るからな。天国でお友達と仲良くな」

そういって立ち去った。

「気のせいか」

何かが動いたような気がしたが、僕は帰路についた。


僕は今、1人暮らしをしている。

アパート住まいではない。

実家だ。


両親が海外に転勤となり、弟は寮生活。

僕は高3なので、卒業まではと、ここに残った。


その日も、いつものように家事をしていた。

最初はだるかったが、これが結構楽しい。

おかげで今は、人並みには出来るようになった。


その時、ベルがなった。

(だれだろう・・)

「はーい」

僕はドアを開けた。


そこには、ひとりの女の子がいた。

でも、見覚えがない。

「あの・・・どちらさまで?」

初対面なら、訊くのは当然だろう。


「ただいま。お兄ちゃん」

「お帰り・・・って、君はだれ?」

女の子は微笑む。


「私よ・・・って、この姿じゃわからないか・・・

アリスよアリス。お兄ちゃんの妹の」


僕は立ちつくした。


「どうしたの?お兄ちゃん。入れてよ」

ここに立ちつくされてもまずい。


僕は少女を、家に招き入れた。


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