ゆびきり
Twitter300字SS第44回お題「約束」より(300字、改行・スペース含めず)
約束だ、とあなたは言った。
約束ね、とわたしは指を絡めた。
約束と口にしながら、わたしはこれが果たされることはないと分かっていた。こんな子供じみて独りよがりな指切りに何の拘束力もない。口約束よりも軽い指切りがあるだなんて知りたくもなかった。
じゃあ行ってくると背を向けるあなたに、わたしはいってらっしゃいも、またねも言わないまま、ただ頭を下げた。遠ざかる背中を視界から追い出すように、いつまでも、いつまでも。
あれからもう幾年。やはり約束は果たされないまま、わたしは今でもこの川縁に一人佇んでいる。
さらさらと音を立てて流れる足下を見つめたまま、わたしは今年も呟く。
「ほら、今年も雨で会えなかったわ、彦星様」
【了】
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