70話「私はあなた達を傷つけていた」
ヤバい……ホントにヤバイ。もう『
煉が私を好きという事実に。
ホントのことを言うと、その事実は今までに感じたことのないぐらい嬉しかった。だけれど、それと同時に悲しみも感じていた。だってこれじゃまるで私が今までやってきたことが、逆に煉の想いを増幅させてしまっていたみたいだから。それはつまり、私はまるで何も役に立たず、結果的に澪の恋を
「――私、あんたのことが好き。付き合って」
『
「はぁ?」
今まで一切そんな素振りのなかったそんな突然の告白に、頭に疑問符を浮かべたように顔をかしげて難しい顔をする。
「私、あんたの望む人になるから、す、好きなように……して、いいから……私と付き合って」
それが嘘だとバレてしまわないように、本当の告白だと信じ込ませるために、私は嫌な顔が出てこないように表情筋に意識を
「……俺さ、嘘つく女って嫌いなんだよねーそれにお前無理してるだろ? 嫌々やってる感が見え見え」
だけれどそんな私の言葉に、露骨に嫌そうな顔をしながら予想外な言葉で返してくる。それはまるで事の事態を全て見透かしたかのようだった。
「そんなことッ――」
嘘が暴かれそうに、というか殆ど暴かれている状態に焦りを感じ、必死に否定してなんとか騙そうとするものの、
「大方、煉を諦めさせるために俺を選んだんだろうが、悪いがその作戦には俺は乗れん」
コイツに完全に私の思惑が読まれていて、私の思惑は
「なんでよッ! なんで誰も彼も私の思い通りにならないのッ! 私の言うこと聞きなさいよッ!」
あぁもうウザい、ウザい、ウザイッ!!!
どうして私の思いを否定するの?
私はただ、澪に幸せになってもらいたいだけなのに。
それすらも許されないの?
私をそんなにイジメて楽しい?
そんな邪魔するやつ、みんな死――
「おいッ、諫山! 言っとくけど、俺はお前のロボットでも操り人形でも、ましてや
「っ! ん……ごめんなさい。ちょっと頭に血が上って……」
こんな事態にイライラが限界突破し、我を忘れてしまっていた。その言葉で、頭を冷やし、私は彼にそう謝罪をした。ダメだ。今のこの状況に完全に追い込まれている。でも、私どうすれば――
「いいって、お前が悩んでんのはわかってるから。でもさ、いい加減自分の気持ちに素直になれよ」
その心の思いに回答するかのように、彼はそんな言葉を口にする。
「ダメッ! そんなことしたら――」
その悪魔の
「はぁー……なあ、妹に対する世話焼きも、度が過ぎるとただのお節介だぞ?」
「そんなことない……そんなこと……」
私は首を横に振りながら、それを必死に否定する。でも、私にはハッキリと言えるほど自信がなくなっていた。やりすぎかもしれない、そんな思い当たる節があったから。でも、お節介でも……それぐらいしなきゃあの子は――
「一つだけ、これは言っておく。お前のしてる行動、それは一体誰のためにやってんだ? 自分の気持ちにケリつけるために、さっきの俺みたいに妹を道具のように利用してねぇか?」
「ッ!? そ、それは……そのー……」
私に
「もう一回冷静になって、そこらへんちゃんと考えてみ? お前が何を選ぶのかは自由だけど、俺たちは『人間だ』ということを忘れないようにな。んじゃ」
「……そっか、私――」
『澪のため』に頑張ってきたつもりでいたけど、むしろ私の想いを終わらせるために、自分の思惑を澪に押し付けていたんだ。一見すると、それは結果的に澪が幸せになるためのように見えるけど、それは澪の気持ちを考えられていないもの。私の望み通りの結果にするために澪を動かして、望み通りの結果になったら自分だけが満足する、いわゆる『自己満足』を得ようとしていただけったんだ。それじゃあさっきアイツが言っていたみたいに、それこそ『奴隷』と変わらないよね。
「でも……でもッ!」
たぶん煉はこれからも私へ何かしらのアタックをしてくると思う。煉の恋という炎はあんなことがあった今でも、きっとまだ
「――もしもし?」
そう考えた時、ある1つの方法が浮かび、私の手は自然と動いていた。携帯を取り出し、『彼女』へと電話をかける。
「うん、お姉ちゃん? どうしたの?」
何も知らない澪はいつもの感じで
「今から屋上に来て。話したいことがあるの」
そして私は一大決心をして、澪にそう告げる。今までのやり方がダメだったのなら、また新しいやり方を見つけて実行してみればいい。幸せにたどり着く道は何も1本とは限らないのだから。だからこそ私は澪に直接会って『私は煉を諦める』旨を伝えようと思う。そして澪の思いを聞いて、これからのことを姉妹2人で考えていこうと思う。というか最初からこうすればよかったんだ。姉妹で澪の気持ちを共有して、一緒に結ばれるために頑張る。これなら今みたいなことにはなってなかったんだ。私、バカだな。お姉ちゃんぶって、澪にお節介焼いて、それで澪に押し付けていたんだから。
「……うん、わかった。今から行くね」
少し間があって、澪はそう言ってくる。私は携帯を切り、屋上のフェンスに背を預けて澪がやってくるのを待つことにした。そんな最中にも、私は自分が今までしたきたことを振り返ってみることにした。アイツに気付かされてから振り返ってみると、私って最悪なことしていたんだと気づいてしまう。たぶん『澪と煉をくっつける』という大きな名目に目が
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