Extra.1-1「新たなる日」
1月25日(火)
「「おはよー
いつかの幼馴染さんみたく、あきらかに出てくるのを待ってましたと言わんばかりのタイミングで俺のところへとやってきて、挨拶をしてくる
「お、よっ、石川に高坂、どうしたんだ?」
その顔はものすごくニヤニヤしていて、それだけで2人の考えがなんとなく読めてきてしまう。
「おめでとー! 栞ちゃんすっごく、喜んでたよ!!」
その話しぶりだと、おそらく栞が2人に話したのだろう、満面の笑みで俺たちを祝福してくれた。
「あぁーそれか……恥ずかしいからあんま言うなって……」
たしかにその祝福は嬉しいけれど、それが教室とかならまだしも、ここは往来だ。如何せん、ここは人の目がある。このくらいの時間なら、他に登校してくる
「ふふ、恥ずかしがってるー」
そんな俺を見て、相変わらずニヤニヤしながらからかう高坂。
「はいはい、んじゃ、いくからな」
それをあしらいつつ、俺は学園へと向かうことにした。
「煉くん、照れちゃってー栞ちゃんいつもの場所で待ってるって!」
そんな俺を見て、石川がそんなことを言ってくる。『いつもの場所』でだいたいの予想はついた。たぶんあの並木道のことだろう。色々とベンチで話したり、告白なんてしてみたり……俺たちにはなんやかんや思い出の場所となっているあそこだ。
「てか、2人は一緒に行かないのか?」
そんな情報を耳入れつつ、俺は学園へと歩き始める。対して石川と高坂はまるでお母さんのように、立ち止まって俺が学園へ行くのを見送っていた。だから俺は2人にそんな疑問を投げかけてみる。
「え? どうして?」
「いや、せっかく一緒になったんだし、みんなで登校した方が楽しいだろ? たぶん栞もそう思って待ってるんだろうし――」
「ふふふ、『栞』だって、さすが幼馴染だね」
「そうだね」
俺がそう言ってるのにも関わらず、『栞』と呼び捨てにしたことに食いついて、そうからかってくる2人。
「あーもうしらねぇ!」
いよいよ恥ずかさしさに耐えきれなくなってきた俺は、2人をほっぽって学園へと向かことにした。朝っぱらからこれでは、学園へ行ったらさらにからかわれるんだろうな、と今から気が重かった。たしかに栞と恋人になれたことは嬉しいけど、これはちょっと気恥ずかしい気持ちになってムズムズしてしまう。それに学園に行けば、この2人よりももっと
「――おっ、よう、煉!」
その道中、できれば教室に着くまで会いたくなかった、厄介者が俺に気づいてそう声をかけてきてしまう。
「ウゲッ……」
俺は思わずその厄介者を見て、嫌そうな顔をして本音を呟いてしまう。コイツと教室ではなく、登校中に会うなんて。ホント厄介だ。
「『ウゲッ』とは何だよ!? 親友が挨拶してんのに、それはねーだろぉー?」
俺の事情を知らない
「いやー悪い悪い!」
俺はそれに軽く謝りながら、内心では焦っていた。さっきの石川や高坂ぐらいのからかいなら、まだ可愛い方だ。コイツの場合はめちゃくちゃ面倒くさい。いつかの時に、ねっちこいぐらいに俺に嫉妬していたのが何よりの証拠だ。たぶんコイツがそれを知ったら、それがさらにうざくなりそうだ。しかもこれから栞と会うのだから、よりコイツにバレる危険性が高まっていく。それに憂鬱な気分になりながらも、俺は3人と共に歩いてく。でも実際のところ、コイツに隠し事しようにも無駄なだけだ。コイツの俺に対するリサーチ力は、もはや犯罪レベルと言っても過言ではないのだから。それ抜きにしたっていつかはバレることだし、早いほうがいいだろう。俺はそう諦め、修二と共に栞の待つ並木道へと向かった。
「――あっ! おはよー煉!」
そしていよいよいつもの並木道へと辿り着く。俺を見つけた栞はいつもの元気そうな笑顔で手を振り、可愛いらしい笑顔でそう挨拶してくる。俺はそれに俺と一緒に3人のこともあってちょっと気まずく、でもちゃんと同じように軽く手を挙げて、挨拶を返す。そして恐る恐る周りの反応を見ると、修二はこれでもかというぐらいに驚いた様子で、石川と高坂は顔が
「『煉』だってぇー!」
石川と高坂が仲良く声を揃えて、そんなことを栞に言ってくる。
「
それで察しがついたのか、修二は徐々に絶望した顔を見せ、栞の方を見つめる。
「ッ!? や、や、だって……だって!」
みんなの反応で事態に気づいてくれたようで、あたふたしながら弁明しようとする栞。そんな栞が可愛くて、しばらく見ているのもいいのだが、それでは栞が可哀想なので助け舟を出すことにした。
「栞、こんなやつらなんてほっといって、もういこうぜー」
そう言って俺は栞の手を繋ぐ。もちろんいつもの繋ぎ方で。もう吹っ切れた。どうせバレるんだったら、おどおどしているよりも堂々としてればいいのだ。結局のところ、結末は変わらないのだから。
「おい、待て煉! お前、いつから名前で呼ぶような関係になったんだ!?」
「いつからだっていいだろー? そういうことなんだよ、察しろ」
「なんだと……」
もはやこの世の終わりみたいな顔をして、俺と栞の両方の顔を行ったり来たりしながら見つめていた。今のコイツに触れたら、壊れしまいそうなぐらいに修二は石化したみたいになっていた。
「ほら、いこっ栞」
そんな修二はほっておいて、俺は栞との時間を楽しむことにした。それからも、女子たち2人はよっぽど『恋』に興味がある年頃なのか、栞に質問攻めだった。修二の方は黙っているが、その顔は魂を失ったような顔で、生気が感じられなかった。よほど俺に恋人ができたことがショックだったのだろうか。そんなことを思いつつ、今日のテスト返しの話でも交えつつ、俺たちは学園へと向かった。
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