20話「犯人の動機」
「――
体育館から出ると、外には
「ああ、うん」
俺はそれを受け取り、
「ああ、そうだ
「うん、いいよ。じゃあいこっか、澪」
「あー悪い……できれば渚と2人だけで帰りたいんだ」
そう言いながら、俺は澪に目で合図を送った。流石は幼馴染、澪はそれを理解したのか、2人だけで帰ることを快く受け入れてくれた。そして澪は『図書館によって帰る』と言ってそそくさと図書館の方へと向かって行った。気を遣ってもらった澪に感謝しつつ、俺は渚と2人だけで自分たちの家へ足を進めていくのであった。
「――で、どうして私とふたりで帰りたいわけ?」
校門を出たところで、
「訊きたいことがあるんだよ。お前と澪のことでな」
でもそこに澪がいるのはちょっと、というかかなり俺たちにとって不都合であったのだ。あの倉庫で生まれた疑問、そしてその倉庫の中で得られたヒントを元に下した結論。それをここで話そうと思う。
「訊きたいこと?」
「まず、なんで渚は今日、俺の部屋を覗いて、俺に合わせて家を出たんだよ?」
「なっ、なんでそれ知ってんのよ!?」
その質問があまりにも予想外過ぎたのか、バカ正直に驚いて素直な反応をポロッとこぼしてしまう。だけど、すぐに自分の失言に気づいたようで、もう遅いのに手で口を
「澪から聞いた、お前まだあの双眼鏡もってたんだな」
「アンタだって、まだ持ってるんでしょ……」
渚はちょっと恥ずかしそうにしながら、俺にそんなことを訊いてくる。言ってしまえば、アレが今もだけど、仲の良かった証みたいなもの。今となってはバカらしいけど、ちゃんと思い出がつまっているもの。まあ、そう簡単には捨てられるものじゃないのは確かだった。
「ま、確かに……ってそんなことより理由を教えろ!」
「あっ、合わせてなんかないわよ……」
理由が訊きたい俺に対し、そんなムダな抵抗をみせる渚。でもそれは幼馴染には通用せず、嘘だとすぐわかってしまう。
「嘘つけ、じゃあ放課後のアレは?」
「アレって?」
「お前、俺と澪をわざと閉じ込めただろ」
ここで俺は真に問い詰めたいことを提示して、渚を攻め立てていく。もちろん俺はその行為に怒っているわけじゃない、ただ理由が訊きたい、それだけだった。
「はぁ!? なわけないじゃん……!」
嘘だとバレてるのに、相変わらずしらを切る渚。往生際が悪いぞ、この幼馴染。
「話が進まねぇーな……じゃあ、勝手に喋らせてもらうけど、あの時いくつか変なとこがあったんだ。まず、渚が面倒くさがりやな俺に、なんでボールの片づけを任したの?」
「だって、あんた最近言われてんでしょ? 『仕事真面目にやれ!』ってだから……」
「まあ、それがもっともらしい理由だよな。でもまだあんの。なんで助っ人に澪を呼んだ? 自分がやればいいじゃん」
澪は学年委員でもなんでもない。ただの一般生徒。そんな人に、ただ自分の妹だからと言って、助っ人を頼むなんてするだろうか。俺だったら、同じ学年委員の誰かを助っ人にする。
「だって、面倒くさいじゃんあれって……」
言い訳なんだろうが、そんな爆弾発言をする学年委員長さん。こいつが
「お前はそれを妹にやらせんのかよ! それにこっちだって面倒くさいんだよ。百歩譲ってそうだとしても、俺は渚のあの行動で確信したんだ」
「えっ、あの行動?」
どうやらそれは自分でも分かっていないようで、急に焦りを見せ始める渚。今おそらく渚は必死になってさっきまでの自分の行動を回想して、その答えを探し出そうとしていることだろう。だから俺はそろそろトドメを刺してやろうと思う。
「そう、扉を開けたのはお前だよな。その周りには誰もいなかった。なんで何桁に変えられたかも分からない暗証番号がわかんだよ」
扉を開けるためにはパスワードを入力する必要がある。パスワードをスルーして強制解除するという手もあるが、そのためには間違いなく先生方が必要だし、時間ももっとかかるはずだ。だが実際には誰も人はおらず、渚だけ。もうこれは確実に決まりだろう。
「そっ、それは、たまたま……」
だけれど、それで負けを認めずに、そんな言い訳で対抗してくる渚。ホントこいつは昔っから素直じゃない。その性格はこういう推理ショーの時には厄介になるだけだ。
「いや、冷静に確率で考えてみろ。いくらなんでもムリだろ」
そのパスワードが仮に最低の四桁だった場合でも、かなりの確率になってしまう。それがたまたまで当たるヤツはそういないだろう。
「もう諦めろって、別に怒っちゃいねーから。俺は渚の目的が知りたいだけなんだ。教えてくれ」
「くぅー……隠してもムダか。いやね、ちょっとさ……澪の事で……」
どこか悔しそうな表情を浮かべながら、ようやく自分の犯した罪を認め、真実を話し始める渚。
「んー、やっぱそれか」
俺の出した結論通りの答えに、ちょっと安心する俺がいた。昼の時からの渚の態度からも、なんとなくそんな感じがしていた。そして放課後のアレ。その考えに至るには十分だろう。
「だって、変だと思わない? 煉のこと『くん』づけしてるんだよ?」
「うん。まあ、俺もそれは気になってたけど……」
「それに澪が『くん』づけにしたのはあのときが初めてで、私もすっごい驚いたの」
「へぇーそうだったんだ」
「煉はなんでかわかる? ま、私はだいたい予想はつくけど」
「たぶん、俺もお前と一緒の意見だと思う」
やはり渚も同じことを考えていたようだ。幼馴染、やはり言葉にしなくてもなんとなく思いがわかってくる。俺も体育館倉庫にいる時、なんとなくそうじゃないかと思っていた。あの素振り、自分でそう思うのも
「もし、私たちの予想が当たっていたら、あんたはどうするの?」
「んー……ま、そんときはそんときだろ」
今どうこう考えてもしょうがない。相手は何も行動してきてはいない。こちらが先にあれこれと行動してしまっては、あっちも動きにくくなってしまうだろう。ま、どこかのお姉ちゃんが今日さっそく先手を打っていたようだけれどね。
「確かに、今はまだ決まったわけじゃないしね」
「そうだな」
そんな感じで話し込んでいたら、もう既に俺たちの家の近くまで来ていた。
「あっ、そうだ、渚。閉じ込めた罰としていつか俺に弁当作って来てよ」
別れ際、俺はそんなお願いをしてみる。なんとなく、昔のことを思い出したら、無性に渚の手料理が食べたくなってきた。今日はレクで疲れて今ものすごく腹がすいているというのもあるかもしれない。でもこれは別に渚の気が向いた時でもいいし、ホントただの口約束だ。そんな軽いノリで俺は提案する。
「んー……ま、いっか。わかった、いつかね」
こんな不確かな約束をし、二人はそれぞれの家へ帰宅する。それから後から帰ってきた
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