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 前の席の高橋君は授業中ずっと空腹を感じていた。どうやら野球部に所属しているらしい彼は、部活の朝練に参加し、かなりハードに体を動かしてきたようだ。持参した弁当を授業開始までに平らげたものの、健康な高校生男子の胃袋は満たされなかったらしい。おかげでぼくは、一限から空腹に悩まされる声を聴く羽目になっていた。

 こんなものを聴き続けていては、こちらのお腹が鳴ってしまう。ぼくは頭の中に入ってくる雑音の中から、他の人の声を聴くべくチャンネルを変える。

 驚いたことに、この教室は空腹な男子女子で溢れているようだ。授業中にも関わらず、空腹に耐える声や、腹の音が周りに聞こえないか心配する声がたくさん見受けられた。

 その中の一人は、およそ大食漢のイメージとはほど遠い榊さんだった。成績も良く、授業態度も真面目そのもの、教師ウケは最高な女子だ。そんな彼女が授業中に食べ物のことを考えているなんて、人は見かけによらないものだ。咲良も人前でたくさん食べるのは恥ずかしいと言っていたし、年頃の女の子はそういうものなのかもしれない。

 咲良はそんなことをしていないと思うけれど、もしかしたら榊さんが授業中にも関わらず早弁を敢行しているかもしれないと思うと愉快だった。ぼくが後ろの席の芝崎さんと話すために後ろを振り向きでもしないと榊さんの真実は決して確かめられないのだけれど、見えないからこそ良いこともあるということだ。

 まあ榊さんも芝崎さんも高橋君も、一回も話したことはないんだけど。心の声だけは毎日のように一方的に聴かせてもらっている。

 あの日――両親がぼく達兄妹の前から消え去った日から、ぼくは他人の声が聴こえるようになった。はじめは神の声だと思い、実際は咲良の声だった、あの声と同じように。

 聴こえるといっても鼓膜を震わせて音を知覚しているわけではない。脳内に響くように誰かの声が聴こえてくるのだ。普段はノイズのようなボリュームで、然程不快感はない。

 当然だろうが、聴こえるようになってからしばらくは戸惑った。誰にも聴こえていないものが聴こえるのは不気味なことだ。自分だけが特別だ、などと調子に乗る図太さはぼくにはなく、周囲の人間に気づかれないか、怖がられないか、そんなことばかり考えていた――いや、正直なことを言えば周囲の人間からどう思われるかはどうでもよかった。

 咲良だ。ぼくにとって大切なのは咲良に不気味に思われないか、ということだけだった。不安で眠れない夜も、バレないように吐いたこともあった。一度だけ、不審に思われないような会話の流れで、慎重に言葉を選んで、咲良に尋ねたことがあった。他の人の考えが聴こえることはないか、と。そこで咲良が「ある」と言ってくれれば、ぼく達は二人だけの秘密を手に入れて幸せでいっぱいだったに違いないのだが、生憎と咲良にはそのような経験はなく、“二人だけの秘密“は”明かせない隠し事“へとクラスチェンジした。

 悪用できないか、と考えたこともあった。そんな才能は全く必要ないにも関わらず、いくつか悪い使い方を思いつくことはできたが、結局それらは一度として陽の目を浴びていない。咲良に失望されることが怖くて、ぼくは悪人に落ちぶれることさえ出来ないでいる。

 結果、ぼくはこの能力の存在を誰にも打ち明けることなく、授業中の暇潰し程度にしか使わないまま高校2年生になった。

 だが、“明かせない隠し事”との密着24時間の生活を6年以上も続けていると、相手の細部まで見えるもので。別に知りたくもなかったが、ぼくはこの能力についてかなり詳しくなっていた。慣れもあるのだろうが、自力で詳細を解明していったのが前向きに働いたのだろう、分からなかったことが明らかになるたびに、能力を不気味に感じることは少なくなっていった。

 咲良に隠し通さないといけないという後ろめたさこそあれ、特異な能力を持っていることに対して不便さや不満を感じることは最近では限りなくゼロに近い。

 けれど、この能力について近頃は少し悩まされている。

 知らない人間の声が聴こえるのだ。

 ほら、今も「助けて……」と聴こえた。



「まず、声と顔……」

 図書館の隅っこで、誰にも聞こえないように配慮しながら独り呟く。誰にもバレないように、という自己防衛的な配慮ではあるのだが、もし通りすがった人に聞かれれば社会的に危うい立場になるか、或いは心配されてしまうような光景だった。

 もちろん、図書館というのは本を読んだり勉強をするのに利用する場所であって、一般の利用者の迷惑にならないように、という気持ちもある。幸いにして、この五月という時期は中途半端で、図書館の利用者は比較的少ない。中間テストに備えるような人間は塾や自宅で勉強することが多く、そもそもその他大勢の生徒はまだ対策に動き出していない。よって今この時期に図書館にいる生徒の大多数が純粋に読書を楽しもうとしている、ということだ。そんな人間の邪魔になりたくない、と思うくらいの人間性はぼくにもあった。

 では、そんな窮屈な空間を選択してまでぼくが何をやっているのかというと、自宅では出来ないこと、咲良にも秘密にしていることについて考えを深めるためだ。

 すなわち、ぼくが直面している“知らない人間の声が聴こえる”という問題についてだ。

 机にノートを広げ、能力について既に分かっていることを書き込む。これはこれで見つかってしまえば危うい物だが、創作物のメモとでも言って誤魔化そう。

 ノートにはまず、“声と顔”と書き込んだ。

「声の主の対象は人間に限る。対象の声と顔をあらかじめ知っている必要がある、と」

 ぼくは人間の心の声しか聴こえない。それも限られた人間の、だ。

 そのために必要な条件はたったの二つ――それが“声と顔”だ。

 対象の声と顔をあらかじめ知っている必要がある。声に関して言えば肉声でも、スピーカーを通した声でも構わないし、顔を知るにもテレビ越しでも構わない。条件としては非常にシンプルかつ簡単なもので、故にぼくは大勢の心の声を聴くことが出来る。

 ただ、これがアンコントローラブルな時期は地獄だった。脳内に響く声は何千万にも及び、常に大勢の声を聴いていれば休まる時がない。ストレスでやつれたこともあった。

 奇跡的に、そこで初めて能力の進化があった。或いははじめから搭載されていた能力の一部がアンロックされたのかもしれない。どちらにせよ、当時のぼくにとっては神の救いの手だった。

「チューニング機能あり。音量と対象を自由に切り替えられる」

 この機能の発現によって、あっても困るだけの能力から、授業中に暇を潰せる玩具に進化した。普段意識しないときは何千万もの声がノイズのように聴こえているのだが、この人の心の声を聴こう、と集中すればノイズは小さくなり対象の考えだけがはっきりと聴こえるのだ。今ではもっぱらチューニングする時に対象の顔を思い浮かべるようにしている。顔がうろ覚えでもなんとかなるあたり、対人関係が絶望的なぼくは気に入っている。

 この能力の特性について、ぼくはテレビやラジオの周波数のようなものだと認識している。雑な調整ではノイズとしてしか捉えられず、丁寧に調整すれば音声が拾える。相手が発信していないのに受信できてしまっているあたり、問題ではあるのだろうが。

「あとは……“距離が離れていると声は小さくなる”か」

 ノートに付け加える。

 これは実生活において意識することはない特性だ。咲良と一緒にいる時間は咲良のことしか考えていないし、咲良と一緒にいない学校の生活においては、そんな距離の遠い友人がいない。そもそも友人がいないのだが、それはこの特性とは関係ない。

 学校にいる間は咲良のことを考えないのかといえばそうではなくて。むしろ咲良のことばかり考えている。だが、咲良の声が聴こえたことは一度としてない。物理的な距離に関係なく、何故か咲良の声は聴こえないのだ。これに関しては、まったく理由が分からない。元々起源不明・詳細不明の能力だったが、輪をかけて謎な部分だ。

 咲良の声を聴きたいかといえば微妙なところだ。聴こえなくてもぼくの愛が揺らぐことはないが、咲良の愛が聴こえないことに不安を覚える自分もいる。咲良は愛情を隠さず伝えてくれるので、不安になるぼくが小さい人間なだけなのだが。

 そう考えてみると、特例はあったのだ。“声も顔も知っているけど聴こえない”、咲良という例が。

 だが、声も顔も知らない人間の声が聴こえる、というのははじめての経験だ。はじめて知らない声を受信したのは一か月前。今日の受信で十回目だろうか。

 声を知っていて顔を知らない、というのはよくある。逆もなくはない。そして、声も顔も知っているはずだけど、両者が結びつかないこともままある。一般的にどうなのかは知らないが、ぼくが下を向きながら生きているせいか、よくあることなのだ。そんなぼくの性質上、誰の声か判別つかない、ということはあり得る。世界の大多数の人間は“知らない人間”だから、条件の緩さを鑑みれば“知らない声”はあり得てもおかしくない。

 だが、ぼくが困っているのは“知らない人間の声が聴こえること”ではない。

 ――それらの声がすべて、助けを求めていることなのだ。

 声も顔も知っている人間の声をぼくが忘れていると仮定した場合、ぼくがチューニングしていないのに受信することがおかしい。本当に知らない声が聴こえているなら、条件を満たしていない以上、どう見たって異常だ。

 結局は、ぼくの理解の及ばないことが起きていることだけは間違いない。

 ぼくはどうするべきなのか、と文字にしてみた。だからといって答えが浮かぶわけもなく。直感は正解を教えてくれないし、啓示は降りてこない。

 無視してもぼくは困らない。知らない誰かに助けを求めて、それで手を握ってくれる人間はヒーローだ。とてもじゃないが、ぼくはそんな人間ではない。

 誰かのための人間になるなら、ぼくは咲良のためだけの人間でありたい。その気持ちが真っ先に浮かんだし、間違いではないはずだ。

 胸の奥がむずむずするのはどうしてだろう。知らない声が助けを求めているからだろうか、人並みの罪悪感だろうか。

 だとしても、よりにもよってぼくじゃなくてもいいだろう。

 ぼくみたいな小さい人間に、何かを期待するなよ。


 ぼくは唸りながら、咲良のいる中学校へと歩いていた。答えが出ず悶々としている間に、時計の針は迎えの時間を指しており、消化不良のまま図書室を後にした。

 咲良の存在は自分の悩みよりもはるかに優先度が高いのだから、仕方がない。

 咲良の下校時刻はぼくより遅い。中学校と高校で比較するなら、最後の授業の終了時刻にはあまり差がないのだが、咲良は吹奏楽部に入っていて、ぼくは帰宅部だ。自然と、咲良の方が帰宅時間は遅くなるわけだが、最近は明るくなってきたとはいえ、夕方には真っ暗な時期もあるわけで。妹愛が止まらないぼくとしては毎日迎えに行くのが最も安心かつ安全だろう、という結論に至った。

 ぼくが安心したいから、というのは咲良のことを慮っているようで非常に独善的な表現になってしまったと思うのだが、わが最愛の妹はその提案を優しく受諾してくれた。自分の妹ながら人格が出来過ぎている。誇らしさを通り越して心配になる。

 と、考えている間に咲良の通っている中学校に到着した。楽しい時間は一瞬というが、咲良のことを考えているとあっという間である。

 ぼくはいつも通り、校門近くの公園でベンチに腰掛けながら咲良を待つ。卒業生とはいえ、部外者が敷地内で待つのは問題だろうし、咲良が変な目で見られるのは絶対に避けたいからだ。ぼくが奇異な目で見られるだけならどうでもいいのだが。

 咲良を待つ間に“助けを求める声”についてもう少し考えようかと思ったが、狙ったように――実際に時間をみて迎えに来たのはぼくなのだが――咲良が現れた。

「兄さん、お待たせ」

 全然待ってないよ、と返して、仲良く並んで帰り始める。

「今日も図書館で勉強してたの?」

 そうだよ、と答える内側で心が軋む。能力のことは咲良には話せないから。

 実際、能力について考えていないときは図書館では勉強している。毎日咲良を迎えに行くのだから、必然的に毎日勉強することになり良い結果として表れている。

「家で待っていても大丈夫なのに」

「好きでやってるんだから、迷惑じゃなければ続けさせてよ」

 何度とやった会話をリピートするように言葉が出てくる。咲良の表情は、ぼくの顔を見て困った兄だな、と語った後、満更でもないように変化する。

 こういう時、愛されているなあと思う。声が聴こえなくても、十分に。

 

 家に着けば、戸の鍵穴に鍵を差し込み、捻る。誰もが行う、何の感情も動かないただの日常動作。ただ、今日に限ればその調和のとれた日常の中に違和感があった。そこにあると期待していた、鍵にかかる抵抗とカチリと鳴る開錠音が不足していた。

「不用心な……」

 小さな憤りが向かう先は当然ながら咲良ではない。そもそもぼく達は同じタイミングで家を出るので、どちらかが悪いということはない。

 だからその憤りはもう一人の同居人に向けた感情だ。一緒に住んでいる、正確には住まわせてもらっているのだが、同居人の悪い癖に向けた感情だ。

「先帰ったら鍵閉めてっていつも言ってるのに!」

 ドアを開け、開口一番語りかける。その声へのレスポンスは、リビングからの物音で行われた。経験的には、声に驚いて紙の束を床に落とした音だと予想される。

 こちらは動揺することもなく、扉の鍵を閉めてからリビングへと進む。一枚のドアを開いた先には予想した通りの光景と、先程まで雑誌を持っていたであろう姿勢のまま固まった一人のOLの姿があった。

 OLが、機械仕掛けの人形のようなぎこちない動きで振り向く。

「そっちこそ、帰ったらまず『ただいま』だ、つってんでしょ……」

 ハリのない声に今更驚くようなこともなく。ぼく達は荷物を置き、慣れた手つきで資料と思われる雑誌を拾い、その女性に手元に戻す。

「ただいま、叔母さん」

「ただいま、美里叔母さん」

 ぼく、咲良の順で発された言葉に叔母さんは「ん、おかえり」と反応しただけだった。満足したように、汚部屋、もとい自分の巣へと戻っていく。

「叔母さん、今日はご飯どうするの? 今からまた職場?」

「今日はもう行かない。夕飯できたら呼んで」

 ギリギリ聞こえるか聞こえないかくらいのボリュームだった。ぼく達はもう慣れているが、会社では大丈夫なのかと心配してしまう。要らぬ心配なのかもしれないが、くたびれた背中を見ると考えずにはいられない。

 バタン、と叔母さんが巣に戻ったのを確認すると、ぼく達はキッチンへ向かい、今日は何を作ろうか、と相談する。

 無意識にニヤけてしまっているかもしれない。こういう日は、咲良も普段より楽しそうに見える。一緒に料理をするのが楽しいのもあるだろうが、幸せを実感してしまうのだ。家の扉を開けて「おかえり」と言ってくれる人がいる幸せが、とても貴重なものだってぼく達は思ってしまうから。


 食後のリビングでは、叔母さんが好きなバンドのライブ映像を見ている。特に料理が上手でもない高校生が作ったカレーを、それはそれは美味しそうに3杯もおかわりするところが叔母さんの美点の一つであるとぼくは思っているのだが、食べてすぐに見せる力の抜けきった姿を見るとペットに近い魅力なのではないかと失礼なことを思ってしまう。

「アタシの推し、ベースなんだけどさ、ライブでベースの音って聴こえづらくない?」

 叔母さんが夕飯を食べる前の倍以上のボリュームで喋る。洗い物をしているぼく達に話しかけているからなのだろうか。アルコールが入っているからかもしれない。

「でも意識して聴こうとすると聴き分けできるのよね、不思議よね」

 なんとか効果っていうのよ、と独りで勝手に続ける叔母の言葉に、ぼくは内心でへえ、と驚いていた。そのなんとか効果は、ぼくの受信能力と似ている気がしたからだ。

「ぼくなら部活の演奏の中でも咲良の音色を聴き分けるけどね」

「それもなんとか効果の力ってこと」

「いや、ぼくのは愛の力だね」

 そういうことが聞きたいんじゃないの、と叔母さんはしっしっとぼくを追い払うようなジェスチャーをする。バカ話がしたかったんじゃないのか。ぼくは本気だけど。

「兄さん、そのお皿洗い終わったのならちょうだい?」

 あとで調べてみよう、と考えていたぼくの袖を咲良が引っ張っていた。ごめん、と言いながら渡すと、咲良が受け取って水分を拭き取る。いつもの役割分担だ。

 ぼく達が叔母さんの家族になってからは、家事はぼく達に任されている。

 叔母さんは働いて帰ってくる。日付を跨ぐ日もあるけれどそういう時は必ず連絡がある。ぼく達は養ってもらっている身として家事をこなす。叔母さんの家に住まうようになってから、ぼく達の間に交わされたルールだ。

 ぼく達の両親が蒸発してからそう間もないころ。親類の誰もがぼく達を持て余していたころに叔母さんが保護者として立候補したらしい。

「アタシに迷惑かけなければ自由にしていいから……あ、でも家事だけはお願いね」

 叔母さんはぼく達を引き取る時にこれ以上のことは何も言わなかった。言わなさ過ぎてぼく達がこの大人は信用して大丈夫か、と疑うほどに。

 けれど、蓋を開けてみれば叔母さんはカッコいい大人だった。ぼく達みたいな得体の知れない子供を自由にさせる度量も、ぼく達の過去に触れない深慮も、引け目を感じないように家事を任せる配慮も、全てはぼく達を大人として扱っているからだ。

 過大評価かもしれない。実際にはそんなことを考えてないかもしれない。それでもいい。ぼく達兄妹は叔母さんをカッコいい大人と定めた。重要なのはそれだけだ。

 叔母さんは正面から感謝を伝えても絶対に受け取らないので、ぼくと咲良は自分達に任された仕事で満足させることで返そうと決めている。

 気づけば、叔母さんがすっかり静かになっていた。ライブ映像を止めると叔母さんの寝息がかすかに聞こえる。仕事で疲れ果てた叔母さんはすぐに寝てしまう。そんな叔母さんを寝床まで送り届けるのもぼく達の仕事だ。

 汚部屋の中で人を運ぶ大冒険が終われば、ぼくと咲良はだいたい寝るまで話している。日常の何でもないことや、テレビの小さなニュースでいくらでも話していられる。話が途切れることもあるけれど、その沈黙すら大好きだ。

 これが、ぼくの日常。勉強したり能力について悩んだり。咲良と買い物に行ったり掃除をしたり。細かく変わる部分はあるけれど、これがぼくの日常で、ぼくの幸せだった。



 ――日常が崩れるには、小さな衝撃で十分だった。

 きっかけは、机の中に入っていた一枚の手紙。

 ぼくが死ぬのも、彼女が壊れるのも、たったそれだけで十分だった。

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