1-1-5 少女の背負いし業

【忌子視点】


「すみませんでした・・・。先ほどは取り乱しました・・・」


 地に頭をこすりつける女の人は、「ノー、タッチの精神を忘れておったぁぁぁ」と呟きながら深々と誤って、いや謝っている。

 彼女が意識を取り戻すまでの、しばらくの間に。兎の腸取りを終え、焚き火で焼き始めた僕は、「理の本」に彼女の奇行について聞いてみた。

 本によると。

 彼女は、未熟な子供に限りないパトスを燃やす業の深い人種で、地獄に落ちるべき変態の一種であるとのことだ。それは、一生かかっても治る見込みのない不治の病に罹っているのと同じ、とも書かれていた。

 不治の病!

 ひょっとして「忌子」の僕よりも、彼女は重いものを背負っているのではなかろうか。それなのに僕は、自分が世界で一番不幸だと、そう思って彼女にストレスをぶちまけてしまった。

 なんて、子供なんだ・・・。

 彼女の不運な境遇に涙する僕。

 続く、本人は幸せ、という言葉に、幾分か慰められる。


「はい」


 回想を終え、ちょうどいい感じに火が通った串焼きの兎を渡す。


「あ、ありがとう・・・」


 彼女がそれにかぶりつくのを見てから、僕も自分の分に手を付け始める。

 ・・・。

 咀嚼音のみの、静寂。沈黙。犬は、女性が起きる前に渡してあった生肉を食べ終え、すでに丸くなっている。

 会話がない。ちょっと気まずいな。彼女の方をちらっと見る。

 血走った目で、僕の肉を見ていた。それはもう、爛々と。暗くなってきたのが理由か、何だか光っているようにも見える。

 一つじゃ足りないのか? あ、あげないぞ!


「か・・・間接キ・・・したい・・・、はっ」


 僕の視線に気づいて、すごい勢いで顔を背ける。一体何だったんだ?

 それからまた、長い沈黙が流れる。

 気まずさに慣れ、逆に初めて人と食事をとったことによる心地よさを感じ出したときに、ちょうど兎を食べ終わった。味は正直微妙だったけど、兎以上の何かを味わった気がして。夜風とともに心地よい。

 満腹感と雰囲気に酔っていたら、不意に声が漏れ聞こえてきた。


「私の村に、あなたがいてくれたらなぁ」


 暗く、悲しく、過去を悼む声?

 ・・・そうだ。ずっと気になっていた。彼女が一人と一匹で、こんな森の中心部分で生活している理由。


「どうしてこんなところで暮らしているの?」


 すっかり暗くなって、焚き火が辺りとともに、女の子の明るい金髪も照らす。

 あれ、そういえば「金髪」だったのか。彼女の髪の色なんて全く気にしてなかったな。そんなに余裕がなかったのか、僕は。

 ゆっくりと体育座りの足を伸ばし、猫背の姿勢になってリラックスする女の人は、うすらと滲む涙を焚き火で乾かして。

 徐に切り出した。

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