第18話「お返し」

 長嶺さんと一緒に駅前まで来た。この前買えなかったものを買うらしいが、ほんと僕のいる意味無いよね。


「それで、何を買い忘れたんですか?」

「着いてからのお楽しみや」


 そして連れてこられたのは男性向けの服屋だった。


「今日はこの前付き合わせた相澤の為のお礼をしたいねん」

「別にいいですよ!そんな!麻那辺さんだっていましたし!」


 あの時はバレないために付き合うしかなかったわけだから、お礼をされるようなことは無い。


「たしかに麻那辺さんもいたけどあの子には別のお返しをしたし、ウチなりのけじめやね、少なくとも脅迫めいたことをしたことは事実やし」

「・・・」

「なんやねんその顔」

「すいません、意外というかなんというか、真面目なんですね」

「意外で悪かったな、やるなら正面からぶつかりたいねん、なのにこの前は卑怯な手使うてしまったし、だからお返しさせろ」

「・・・わかりました、ありがとうございます」

「じゃあ相澤には帽子なんかどうや?普段つけとらんやろ」

「はい、帽子は1個もないです」

「なら帽子やな、相澤にはレールキャップとか似合うと思うてるんよ、被ってみてや」


 そして渡されたのは黒のレールキャップ


「はい、どうですか?」


 鏡で見た感じ、似合ってるかどうかわからない、まぁ服は制服だし、纏めて見ると似合ってはいないだろう。


「なるほどな、黒じゃあんま似合わへんな・・・定員さーん、他の色ありません?」

「少々お待ちください」


 そう言って定員は店の奥に消えていった。それから少しして白と赤、紫など数々の色のキャップを持ってきた。


「どれでもご自由に試着して下さい」

「ありがとうございます」

「さて、色々持ってきてもろたし、全部試してみよか」


 黄色、赤、紫、白、紺、灰色、黄緑などなどたくさんの試着をした。でもどれも僕にはハマらないらしく未だに迷っている。僕からすれば紺とか結構よかった気がしたけど、長嶺さんは納得していない様子。


「長嶺さん、やっぱりいいですよ、帽子は普段使うかと言われたらそこまで使う機会もないですし」

「そうか、どないしよ」

「長嶺さん、僕は一人暮らしなんで飯作るのが面倒なんですよ、なので夕飯奢ってもらえるだけでも嬉しいんですけど」

「わかった、なら夕飯奢ったるわ」

「ありがとうございます」

「何か食べたいもんあるか?」

「特にはありません、長嶺さんのオススメでお願いします」

「せやな、ならパスタにしよか」


 そして、僕達は長嶺さんオススメのパスタ屋に向かった。


 ────いらっしゃいませー


「長嶺さん、ここのオススメはなんですか?」

「ナポリタンかな」

「じゃあナポリタンにします」

「ウチも決まったわ、すいませーん」

「はい。ご注文をお聞きします」

「ナポリタン1つとたらこスパゲティ1つで以上です」

「かしこまりました」


 長嶺さんは定員さんを呼んでササッと注文を終える。


「長嶺さんって目上の人にはちゃんと敬語になるんですね」

「そらそうやろ、当たり前やで、ウチは別に不良じゃないからな、見た目で間違えられるけどそこら辺は弁えてるわ」

「不良だと思ってました、すいません」

「言われ慣れとるし気にしとらんよ」


 そんな会話をしていると注文した物が届いた。


「おお、美味しいですね」

「せやろ、ここのはどれもうまいんだわ、このたらこスパゲティも美味しいぞ、食べてみ」

「じゃあ遠慮なく、いただきます・・・あ、美味しい」

「やっぱりこの店はほんと美味いもんばっかや」


 それから食べることに集中して食べ終える。僕達は少し食休みをしてから店を出た。


「今日はご馳走様でした」

「かまへんよ、これはお返しや」

「ありがとうございます。もう暗くなるので帰りましょう」

「せやな」

「送りますよ?」

「大丈夫や、電車やから、また明日」

「はい、さよなら」


 今日は長嶺さんの知らないところを知ることが出来た。意外と几帳面な長嶺さん、義理堅いというか、責任感が強くて面倒みがいい。今日はそんな長嶺さんを知ることが出来た。そんな事を思いながら帰路につく。


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