胙(ひもろぎ)はその身を喰らわせ懊悩する 04

 もえさかるもりのなかで、おれはこうきをみつけた。

 おれはからだのあちこちがちぎれたりえぐれたりしていたので、とてもあるくのがおそかった。

ゆっくりゆっくりといもむしみたいにはって、こうきのところにやっとたどりついた。

のどがけむりとねつでやけてしまっていて、うまくこえがだせない。

だからおれははなさきでこうきをつついて、おれがちかくにいることをおしえてあげた。

 だけど、こうきはへんじをしない。

 なんども、つんつんとこづく。やっぱりへんじはない。

ひゅーひゅというすきまかぜのようなこえで、こうきのなまえをよぶけど、やっぱりへんじはない。

なんどもなまえをよぼうとするうちに、のどがなおってこえがもどってきた。

だけどこうきはへんじをしない。

きこえているはずなのに、へんじをしない。

うごかない。

まわりはひとのさけびこえと、すみぞめのそでのほうこうでいっぱいで、まるでこのよのおわりみたいだった。

 すおうと、あほうどりは、どこにいるのだろう。

こうきがここにいるのなら、ちかくにいてもよさそうなのに。

 どうしてだろう――たくさんかんがえて、きづいた。

 まったくへんじをしないこうきをめのまえにしてりかいした。

 ああ――こうきのたましいはもうここにはない。

だから、みんなもういなくなってしまったのか。

 にげているのか、たたかっているのか――じゃあ、おれはどうすればいいのだろう。

 ぐぅぅぅっとおなかがなった。

えぐれたところからちをながしながら、おなかがなった。

 おれはおなかがすいていた。

しにそうなほどに。

だから、こうきをたべることにした。

 おおきくくちをあけてこうきをはんだ。

そしてそのまましろくてやわらかいはだにはをたてて、にくをくいちぎった。

かみしめるとちのあじがした。

 まだ、すこしあたたかかった。

 おれはだまってこうきをたべつづけた。

ちのいってきだったって、

にくのいっぺんだって、

ほかのやつらにはわたしたくなかった。

 こうきは、おれのものだ。

さいしょから、さいごまで、そうなんだ。

 しらないうちに、おれのかおがぬれていた。

 こうきのちかとおもったらとうめいで、ちとおなじくらいしょっぱかった。

 こうきをたべおわって、おなかがいっぱいになっても、とうめいなしょっぱいものはかおをぬらしつづけていた。

 よるのそらが、ほのおになめられてあかぐろくそまっている。

 さあ、じゃあおれはどこにいこう、たちあがってかんがえる。

 ねむりたいとおもったけど、まだもりじゅううるさくて、このままおたきやまにかえって、とてもぐっすりねむれそうにない。

 だからまず、うるさいのをぜんぶとめようときめた。

 うるさいあいつらをぜんぶころして、もりがもえているのもけして、しずかにしてからねむろうときめた。

こうきもすおうもむらをたすけたがっていたし、ちょうどいい。

 とうめいなしょっぱいものをてのひらでぬぐいながら、おれはあるきだす。

 もうえぐれたりちぎれたりしていない。

しっかりしたあしどりだ。

 はやくしずかにして、まんてんのほしぞらのしたねむりたい。

 そしてぐっすりねむっておきたら、さがしにいこう。

 げんきなこうきを、わらってくれるこうきを。

はなしてくれるこうきを、あったかなこうきを。

 みつけたら、まえみたいにたかいたかいしてあげよう。

たくさんあそぼう。


 だって、こうきはおれのひもろぎなんだから。

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