3.異世界ックス(R15)


「私たち、これから一体どうなってしまうんでしょう」セリカがぽつりと呟く。


 スーパー首つり処刑タイムの後、俺達は城内へ案内された。

 セリカとジャナムは顔面蒼白になっていた。

 既に日が暮れて城内も暗かったが、それでも血の気が引いてるのは分かった。


「まあなるようにしかならんだろ」

「ミスター特殊部隊は気楽で良いな、その卓越(たくえつ)した技術でこの場を切り抜けてくれ」と、ジャナム。

 俺は中東人(ジャナム)にあだ名をつけられていた。


「うっせーよISIS(テロリスト)! シリアの人達に謝れバーカ!」

「黄色猿が」




「異世界人殿方、今夜はこちらでお休みください」


 俺達はそれぞれ城内の部屋へ割り振られた。

 部屋の中は広く、一人で使うには大きすぎるほどだった。

 テーブルの上には高価そうな瓶に入った酒? やこの世界の果物らしき物が置かれている。


「高級ホテルか? 分かりやすいな、おい」

 残虐な見せしめの後にはスイートルームが待ってた。

 典型的な飴と鞭だなぁ。

 だが、部屋に入ると外から鍵をかけられ、セリカやジャナムと今後について話し合うことは無理そうだった。


「相談させたくないんだろうな、きっと。三人集まりゃ文殊の知恵だ」


 状況がよう分からんが、あのルアスというおっさんは、俺達を利用したい腹づもりのようだ。

 そんな奴が俺達を殺したり厚遇したりする。

 異世界人である俺達の数は減っても構わないが、大事な存在でもあるらしい。

 って事は、大人しくしてればすぐにどうこうされる事も無いだろう。


「寝るか」

 ベッドに寝っ転がる。

 いろいろ悩んでも仕方ない、今出来ることは限られている。

 相手のペースに乗って様子を見るしかないだろう。

 言うことをハイハイ聞いていればこういう待遇を受けさせてやるぞとの相手の意思表示かもしれない。


「むひぃ」ベッドから声が聞こえた。

 シーツをめくると、中からあの小柄(こがら)な女が出てきた、裸で。


「て、てめぇー……よくも俺の前に顔出せたなクソビッチ。有難(ありがと)うよ、てめーのおかげでグロ動画を検索する手間が省けたぜ」

「だから言ったじゃんー目を開けないでって。一緒に来たかったのに座標がずれて別れちゃった」

「今すぐ元の世界に返せよ、そうすりゃビンタ一発で許してやる」

「無理だよ、リアム、こっちの世界でゲート開く方法わからーん!」


 ええ……マジかよ……。


「何がしたいんだよお前ー」


「うんとね、リアムね、魔王様のね、赤ちゃん欲しいの」

「そうか、良い心がけだな……うん?」

「魔王様の赤ちゃん妊娠したいのね」


 随分生々しい単語が出てきた。


「ほ、ほほー?」

 ドクンッと心臓が跳ね上がる。

 ついでに俺のアレも角度を上げた。


「えへへ、二人っきりになれたね」

 リアムが抱きついてくる、裸で。


「んぐっ」唇を唇で塞がれ、変な声が出る。

 じっくり見ると、やはりリアムは相当可愛かった。

 基本的に全身が白く、人間離れしている。

 白い髪、白い肌。

 瞳はうっすらと赤く光り、妖しい視線で俺を射抜こうとする。

 俺がベッドに腰掛けると、リアムは俺に跨り、全身を押し付けながら粘膜接触してくる。


「しゅきっ、魔王様好きぃ。んちゅ、れろっ」

 俺を殺した女である。

 そんな奴に好き言われても困る、でも俺の体はそう言ってない。


 リアムは俺の口の中に躊躇なく舌を這わせ、俺の舌をからめとろうとする。

 俺はもう抵抗するのをやめていた、つーか積極的にリアムの口を吸い始めた。


 舌も体もめちゃくちゃやわらけー!

 良い匂い。

 顔小さい、可愛い。


 もうリアムに対する嫌悪感は綺麗さっぱり消え去り、ただ次に訪れる欲望の発散を期待するばかりである。


「ぷはっ」

「ずっと待ってたんだよ、魔王様とこうなるの。生まれてからずーっと。ねぇ……交尾しよ?」

 リアムはベッドに座り、両脚(りょうあし)を開いてその花を俺の前に差し出した。


「ううう」


 体が熱い、インフルかかった時よりも熱く感じた。

 目の前の雌(メス)から目を話すことができない。

 理性ではこの女が危険だとわかっている。

 しかし……。

 諸葛亮孔明(こうめい)の再来と俺に言われていた俺だが、今はなんの策も浮かばなかった。


「魔王様ぁ、来て? 魔王様の赤ちゃんの元、リアムの子宮にいっぱい頂戴?」甘ったるい声が耳に掛かる。


 目の前の雌は俺に恭順(きょうじゅん)の意を示し、今か今かと待ち構えている。


 やばいって……やめろよ……この女絶対変だよ、手を出すべきじゃない。

 脳はビンビンに危険信号を鳴らしている。

 でも俺の股間もビンビンになっていた。

 頑張れ、俺の脳細胞、性欲なんかに負けるな。


「せーし欲しいの、魔王様のせーし♪」


「うおお!」

 俺は目の前の繁殖対象に襲いかかった。





---



 結局、部屋の鍵が開けられる明け方までオールナイトだった。

 気が付いた時にはリアムは姿を消していた。


「異世界の太陽って黄色いんだなぁ……」


 太陽がまぶしい。

 翌朝、俺達異世界人達は外に集められた。



 やはり、逃亡や反逆を恐れてだろうか俺達や城主ルアスの周囲を兵士達が固めている。

 皆、眠れていなさそうだった。




「……うぷっ、おえぇぇぇぇ!」


 セリカが地面に胃液を吐き出し始めた。

 無理もない。昨日、この場で首つりを見たのだ。

 プレッシャーは半端(はんぱ)ないだろう。


「大丈夫か?」

「うぅ、すいません……宇田さん」

 俺は背中をさすってセリカを介抱した……フリをしながらおっぱいの大きさを確認した。

 でかいな、リアムより大きいぞ、とても同い年ぐらいに見えん。

 そういえば、あの女(リアム)はどこへ行ったんだろう。




「異世界人殿方、昨夜はよく休めただろうか。今日は本題に入らせていただく」


 ルアスが俺達を前に何か説明に入ろうとした時、彼の後ろからあいつが現れた。


「やっほー魔王様ー!」


「何やってんだよお前」

 場に緊張が走る。

 殺されるぞあいつ。


 だが、そう思った瞬間、あいつはとんでもない事をした。


「邪魔、どいて?」


 リアムはこの場の絶対権力者ルアスを突き飛ばしたのだ。

 だが、驚いたのはそこでは無かった。


「これは巫女(みこ)様」


 城主ルアスが深々と頭を下げ、リアムに礼を示したのだ。

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