薄野白髏
田の畔を歩くうちに日が暮れた。
水で満たされたところに宵の空が映っている。
見れば一面の水田の中にぽんと薄の築山がある。
水気を含んだ秋風は長く当たれば肌寒い。
薄の中で一夜明かそう。歩みを速め、薄暗い空には星があらわれてくる。
薄の築山は田ひとつほどもない。苦もなく登った。
白いしゃれこうべが数にして八、九.品よく静かな先客だ。
どうやら彼等も眠っているようだった。
穏やかな気分で寝転がり、夜空を眺める。
星々の中を涼しげな色の彗星が落ちていく。
秋風はやはり冷たくなって、私の上でときおり薄がふるえた。
ちらりとしゃれこうべを見た。
眼窩から薄や秋の草花の生えたものがある。眠る睫毛のように揺れている。
ああ気持ちがいい。墓とはこんな心地だろうか。
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