41:ヤクザ・ポリス・ショウダウン

「ねェお巡りさん。わたしィ、ちょっと教えてほしいことがあるのだけどォ……例の連続殺人犯がァこちらのホテルにいらっしゃるって本当ゥ? わたしィ、ちょっと怖くってェ、ホテルを変えようかと思っていてェ、もしよかったらァ、教えてくださらなななななななななあああああがッ」


「おい巡査、お前死にたいのか? 詳しくは言えんが、ここは今危険なんだ。余計な真似をしてないで、さっさと交番に戻ってろろろろろろろろろろうごがッ」


 ……さて。

 俺は、人気のない通路の影で話しかけてきた、妙に色っぽい喋り方をする水商売風のお姉さんと、同じく地下をうろついていた、心根は優しい警官のおじさんを引きずって、ホテルの地下にある使われていない宴会場までやってきた。


 二人を手錠で括り、宴会場の真ん中に寝かせる。

 そして、リネン室からシーツ山盛りのカートを押して、戻ってくる。

 最後に、指先をパチンと鳴らして、火花を立てるーー初級魔法、極小放電リトルスパーク

 小さな火種はリネンを焦がし、ジワジワと広がっていく。


「よし。準備はこんなもんかな」


 俺は二人から奪ったイヤーマイクに電源を入れた。

 一つは、鷹月会の刺客達が連携を取り合うための通信回線。


「クソ! ヤツだ、エザワ・シンゴだ! 地下の宴会場に追い込む! 全員、手ェ貸せッ」


 もう一つは、クソ警官ズが使っている通信回線。


「確保対象を見つけました! 警官が一人負傷しましたが、対象は地下へ逃走! 宴会場に向かったものと思われますッ」


 そして、リネンから立ち上る煙を探知した火災報知器が、凄まじいベル音を全館に響かせ始める。

 吹き出すスプリンクラーが、宴会場を水浸しに……


 さて、ここで問題。

 このあと何が起こる?


「おお、来た来た。みんなめっちゃ怒ってるな……」


 答え。

 極秘作戦をご破産にされてイラ立った殺し屋達と、自分達の安泰が脅かされて焦る刑事達が、水浸しの宴会場でご対面。


 降りしきるスプリンクラーの消火水が、彼らを濡らしていく。


「アァ? オイ、なんだこりゃよぉ!?」


 そして彼らの眼の前では、気絶した刑事と殺し屋が仲良く抱き合って寝ている。

 更にその後ろでは、パチパチと煙を上げるリネンの山。


「こちら地下宴会場。火災の火元と、佐々木巡査部長を発見。鷹月会関係者らしき女性と共に倒れている。何者かに暴行を受けた模様。現場には鷹月会関係者が複数名。事情の説明を求める」


 ゾロゾロと宴会場に足を踏み入れる、いかついヤクザのおじさん達と、いかつい刑事のおじさん達。


 いよいよ仁義なき戦いの火蓋が、切って落とされる……!


「だいぶ盛り上がってきたな」


 宴会場の隅、テーブルの下に隠れていた俺は、すべてを見届けてガッツポーズを取ると。

 水浸しの床に指先を当てた。


「じゃ、ショータイムだ!」


 俺が放った雷撃サンダーボルトは、やってきた全員にお揃いのダンスを踊らせた。

 スリラーのPVみたいなやつ。マイケルもびっくりのキレだ。

(見たこと無い? 別窓開いてYoutubeで探してくれ)


 あ。動画でも撮っておけば、さぞPV集められただろうなあ。

 惜しいことした。


(よし、じゃあ次の作戦は――)


「清実ちゃん! 来たよ、エザワくん!」

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