40:どいつもこいつも悪党ばかり
「エザワ・シンゴは鷹月会の獲物だ! 無能な公僕はすっこんでろ!」
四方津グランドホテル内に響き渡った、俺の声に。
「ちょ、えええええ、清実ちゃん!?」
誰よりもパニクったのは、ブリュンヒルデだった。
「耳元で叫ぶなよ、ビックリするだろ」
「なに! 何!? なにしてんの!?」
モニターの向こうでは、更に混乱する刑事達。
そして、同様に顔色を変えたヤツが何人もいる――多分、宿泊客に紛れていた鷹月会の刺客達。
「やっぱりな」
「ちょっと、一人で納得してないで説明して!」
「シゲ兄さんの情報通りってことだよ」
槍度島がいるってことは、それに釣られてエザワも姿を現すってことだ。
エザワに落とし前をつけさせたい鷹月会も当然出てくる。
(多分、団地に動員かけたヤツの指示だろ)
シゲの兄貴曰く、殺された幹部の跡継ぎとやら。
ソイツも必死なのだろう。
エザワの首が取れなければ、その時飛ぶのは自分の首だ。
「つまり、警察とヤクザにエザワくんの首の取り合いをさせようってこと? じゃ、邪悪……邪悪だよ、清実ちゃん……」
「警察側だって予想はしてただろ。お互いに牽制しあってくれれば、それで十分だ」
俺が投げ込んだ火種のせいで、いよいよホテル内に立ち込める物騒な雰囲気。
先走ったバカ(俺のことだけど)に苛立つ鷹月会。
新たな妨害者(俺のことだけど)の出現に浮足立つクソ警官ズ。
不穏な気配に動揺する一般客と、対応に追われるホテルスタッフ(巻き込んでごめん)。
とりあえず俺は、新たに警備室に飛び込んできた二人の刑事を黙らせると、元からいた四人、合計六人をまとめて手錠で拘束し、目と口を塞いだ。
「で、清実ちゃん? プランBだと、次はどうする訳?」
分からん。どうしよ。
このままやってくる連中を昏倒させながら、エザワの到着を待つか。
(それじゃダメだ)
エザワをロイヤルスイートに辿り着かせるには、もっと頭数を減らさないと。
だとすれば。
俺は警備室のドアを閉めると、六人組の身体でドアを塞いだ上で、もう
更に、そのへんにあった椅子やら棚やらを、刑事達の上に積み上げて。
「次の手を打ってくる。ブリュンヒルデ、ここでカメラを見張ってて。エザワが姿を見せたら教えてくれ」
「えー、あたし、お留守番?」
「子供みたいなこと言うなよ。頼りにしてるからな、パートナー」
言いながら、俺は天井の通気口をモップでこじ開けた。
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