第24話 ユズハ師匠との別れ




ユズハ師匠は突然いなくなった。





ある日、ユズハ師匠は、行くところがあると言い、今生の別れになるかもしれないと言いだした。次の日、ささやかながら送迎会を開くことになった。


「大海ちゃん、泣かないで」

ユズハ師匠は大海をなだめるように抱きしめて頭を撫でた。

「・・・どうして」


「あ・・えーと、そう色々と・・・」

(なんで、はぐらかす?)




「師匠・・・お世話になりました。俺に『はたく』を見せてくれた人、顔も性別も思い出せないですけど、ユズハ師匠みたいな人物だったってそんな気がします」

「・・・一応、それ褒められているのかしら・・・」

「褒めてます」




(まあ、水上君からしたら最大限の賛辞なのか・・・)




「じゃあね。二人とも元気で」




その日から、ユズハ師匠とも大海ともしばらく会うことはなかった。





$$$





それから数日が過ぎた。



(近頃・・・孝一が壁を殴るって言って外出することが少なくなったわね・・・)

母はめったに見ない様子を訝しがる。



ユズハ師匠がいなくなってから急にやる気がなくなった。

前にもこんなことがあった。




いつのことだったっけ・・・




『はたく』を見た直後の気分にそっくりだ・・・

『はたく』を見た日から、ずっと壁を殴ってきたわけじゃない。そうだ、1日、1日と経過していく中で、徐々にそうしたいという気持ちが強くなって・・・1ヶ月後ぐらい経ってからやり始めたんだっけ・・・

今じゃあの時『教えてください』って言わなかったことを後悔してる。



そんな日々とダブるんだ。



「母さん、ちょっと壁のところに行って来る」


(そんなこともなかったか・・・)





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いつも学校の壁を殴っている男子は最強の技を身に付ける @haidoroponnpu

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