第5話 大事件の横で平常運転




荒れ狂う風





校舎裏

少女はカッターナイフを持った同学年の女子に追いつめられる。

後ろは壁だった。




「あんたさえ、あんたさえ、あんたさえ・・・」




「あんたさえ、いなければぁ!!悠馬くんは私を好きになってくれるはずだったんだぁ!!!」


「・・・お・・・落ち着いて・・・」




ああ、これは警察沙汰になる大事件

どうしてこんな目に・・・




ドン





音はない。ただおなかのシンまで響く衝撃が走る。

その発生源は4~5mとなりで壁を殴るジャージの同級生

「・・・・今日は本当に調子がいい・・・今日こそは・・・今日こそは・・・」



「・・・」

「・・・」



らんらんと目をギラつかせたジャージの男子学生は

完全に自分の世界にトリップしているようだった。




わーすごい集中力




「・・・となりに・・・ひともいることだし」

「・・・もう我慢できない!」

女子はカッターを振り上げる。


(ええ、無視)




「あんたの綺麗な顔をずたずたにしてやるー」

少女はしりもちをついた。

振り下ろしたカッターが攻撃対象を外れて壁に刺さる。




ズン




もう一度壁に衝撃が走る。カッターから振動が伝播して、

「・・・なんだこ・・・」

カッターを振り上げた少女はそのまま気絶してしまうのだった。

ジャージ男子もなぜか同時に気絶しているようだった。

2名は保健室に運ばれた。



「水上またお前か!」

ジャージ男子は先生たちにこっぴどく絞られたようだった。

カッター女子は保健室でしばらく寝かされてケロッとしていた。

何をしていたか記憶がないらしい。



事態はよくわからないまま丸く収まった。





$$$






そして、今現在も私はお礼を言えていない。



たまに目が合うと



・・・



心臓がバクバク鳴って

逃げ出してしまうからだ。



(?・・・まぁいいか、壁殴りに集中しよう)





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