第4話 上級生に壁ドンされている横で




彼は今日も壁を殴っていた。

(助けてもらったんだから・・・お礼を言わなくちゃ・・・)





遠巻きに彼を見つつ、

近づくチャンスをうかがう。



「何?あれ」

「ああ、あれは校内で有名な気が狂ってるって噂の・・・」

「ガチで怖~」

「近寄ったら、あの病気がうつっちゃうらしいよ」


後ろを通り過ぎた女子の噂話が聞こえた・・・


急に話しかけるのが怖くなった。




私も同類だと思われてしまうかもしれない・・・




私は勇気が出なかった。






$$$






人気のない校舎裏

先日の背の低い女子がひとりの先輩男子に絡まれていた。

逃げる方向に手をドンと付いて逃げ道をふさがれた。


「君・・・可愛いね・・・連絡先教えてよ」






「・・・あの・・・わたし・・・」






「・・・最近調子が悪いな」



2,3メートル先にジャージ姿で壁を殴る男子が一人



「あ・・・」






「ちっ」


先輩男子はしぶしぶ去っていった。






(また、助けてくれた?)


「あ・・・あの・・・」





「・・・これは『壁ドン』だから」





「あの・・・『壁ドン』って・・・二人でするものじゃ」



「なん・・・だと・・・」



ちょっとショックを受けながら去っていく男子



「ああ・・・」

またお礼を言いそびれた。




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