「die near.」「余命宣告かよ!」

「ということで、何をして遊びましょうか? さぁ、先着順です!」


 5人は智絵が立っている周りを体育座りで囲んだ。


「はいっ!」


 冬華が間髪入れずに元気に手を挙げた。


「お、どうしたんだい、キャサリン?」


「おいおい、君が先着順って言ったから手を挙げたのになんだいその言い草は?」


 冬華は立って、右手で拳銃の形をつくり、智絵のこめかみに押し当てた。


「おっと、物騒だなぁ。変な冗談やめてくれよ。」


 智絵は拳銃をこめかみに押し当てられたまま、両手を挙げた。


「なんか面倒くさいのがはじまったぞ~。」


 香枝は溜息をつき胡坐あぐらに座りなおした。


「さあ、果たして本当に冗談かな?」


「お、おいおい、冗談きついぜ?」


 癒怡と夏海が立ちあがった。


「おや、そこのピストル構えてるマリリン・モンローは君の妻だろ?」


 癒怡が夏海の肩に手を置いた。


「HA!HA!HA! 確かにそうだが、君の見解には1つ間違いがある。」


「おい、噓だろ。このシャーロックホームズ様にミスがあったのか?」


「おっと、残念なお知らせだが、今間違いが2つになってしまったよ。」


「それでは、聞こうじゃないか、僕のどこにミスがあったんだい、アレックス?」


「まず、君はシャーロックホームズじゃない。ボブだろ? そして、僕のハニーはマリリン・モンローじゃなくて、マドンナだ。覚えときな。」


 夏海アレックス癒怡ボブにそう言い残し、手を払って、冬華キャサリンの元へ歩き去っていった。






「ポン。」


 香枝は捨牌の三萬サンワンの数牌を切った。


「……。」


「……。」


 場には、静寂が流れ、牌が河に捨てられる音がしばらく響き続けた。


「ツモ。」


 しばらくの静寂を切り裂いて苺愛が手牌を開いた。


「8000点オール。」


「あー……盛り上がりませんね。」


 香枝が手牌を捨牌だった牌と混ぜながら言った。


「まぁ、麻雀って2人でやるもんじゃないしね。」


 苺愛も手牌を捨牌だった牌と混ぜた。


「……あっちは盛り上がってますねぇ。」


「もう一戦、どうだい、ナタリー?」


「やめとくよ。そんなにもう一戦やりたいなら君1人でやったらどうだい、オリビア?」


「麻雀を1人で? 馬鹿な冗談言ってると…………やめよ?」


「そうですね。まぁ、苺愛さんが始めたんですけどね。」


「ごめん。」


 苺愛は少し顔を赤らめた。


「あ、恥ずかしかったんですね?」


「ゎあ~! 言わないで~!」





 一方その頃某所では……。


「やめときな、冬華ハニー。」


 夏海アレックス冬華キャサリンに近寄り、肩に手をのせた。


「なんだよ、ジャック?」


「おっと、僕の名前はアレックスだよ。誰だい、ジャックってのは?」


「あぁ、私のボーイフレンドさ。」


 キャサリンは構えてた銃を降ろした。


「ん? 君は僕のハニーだろ?」


「そうだが?」


「じゃあ、ボーイフレンドとはなんだい?」


「夫とボーイフレンドは別さ。」


「それは二股ということかい?」


「そうなるのかい?」





「チェックメイト。」


「あ、うそー! 香枝かっちゃん強ぉ!」


 苺愛が目を丸くした。


「チェスは得意ですから。」


 香枝が自慢げに言った。


「やっぱり、キングなしの相手には勝てないよぉ~。」


「ま、キング1つ無かったからしょうがないじゃないですか。」


「こんなの、最初の“キングいるかいらないかじゃんけん”の時点で勝敗決定してるじゃん!」


「まぁ、そうなりますよね。」





 一方その頃某所では……。


「まぁ、いい。で、そのボーイフレンドはどこにいるんだい?」


「こいつだよ。」


 キャサリンは智絵ジャックを指さした。


「ハロー、僕がジャックさ。」


「そうか、しかし残念だったな、ハニー。ジャック、君には恋人がいるだろ。なぁ、癒怡ボブ。」


「あぁ、そうさ。なんたって、僕がジャックの彼氏だからな! HA!HA!HA!」


 ボブはそういいながら、3人に寄っていった。


「ぼ、ボブ! なんで、こんなとこにいるんだい?」


「そりゃ、僕は君の事を愛してるからさ、ジャック。」


「ボブ……。僕も君を愛している!」


 ジャックはボブを抱き寄せ、抱きしめた。





「終わらないですねぇ。」


 香枝が頭の後ろで手を組み溜息をついた。


「……さっきの逆バージョンだもんね。」


 苺愛は玉将を、右斜め前に動かしながら言った。


「これは、将棋ですか? パス。」


「まさか、今度は駒が玉将しかないなんてね。」


 苺愛は玉将を、左斜め後ろに動かしながら言った。


「ほんとですよ、こっちの駒最初から0ですよ! パス。」


「こっちだって、最初から1個しかなかったよ? って、“かっちゃん”さっきからパスしかしてないじゃん!」


 苺愛は玉将を、右斜め前に動かしながら言った。


「駒ないですから! パス。」


「……。」


 苺愛は玉将を、無言で左斜め後ろに動かした。


「……。パス。」


「「あ! この玉将をさっきのチェスのキングの代用にしたらいいじゃん!」」


「けど、もう飽きたねぇ。」


 苺愛は玉将を、右斜め前に動かしながら言った。


「私も。……あ、パス。」





 一方その頃某所では……。


「おいおい、ジャック。私の事はどうなったんだい?」


「……。あ、ジャックって私か!」


「疲れたね。」


「「「「……。」」」」


「よし、やめよう!」


「「「賛成~。」」」


「で、かえまると苺愛さんはなにやってるんですかね?」


「聞いてみよう。」


「ねぇ、苺愛~、かっちゃん。なにしてんの?」


 4人は苺愛と香枝の元へ行った。


「「ポーカー。」」


 苺愛と香枝が同時に答えた。


「あのぉ、楽しい?」


 夏海が恐る恐る聞いた。


「今回も私の勝ちだね。」


 苺愛は手元を見て微笑んだ。


「ほう、果たしてどうですかねぇ。」


 香枝も手元を見て微笑んだ。


「では、


「「せーのっ!」」


「フルハウス!」「フォーカード」


「ぬあ~! 負けた~!」


 苺愛が頭を抱え、悔しがった。


「ふっ。今回は私の勝ちですね。」


 香枝は不敵な笑みを浮かべた。


「た、楽しい?」


 夏海は再び聞いた。


「え? うん、楽しいよ。ね?」


「はい。では、第5戦目としましすか。」


「そうだね。次は負けないよ~!」


 4人は10歩ほど下がり、顔を見合わせ、苦笑いし合った。


「よし、私行ってきます。」


 冬華は小声でそういい、苺愛と香枝の元へ歩みだした。


「ま、待て! これは危険を伴うんだぞ! 下手したら命失うんだぞ!」


 智絵が冬華の前に立ちふさがった


「分かっています。でも! 男にはやらなきゃいけない時があるんです。」


「待てよ!」


「なんですか?! 私は早く行かなくてはいけないんです!」


「……お前、女じゃん。」


「え、うそ?!」


「……それでも行くのか?」


「はい。」


「なら、一つ良いことを教えてやる。」


「なんだ?」


「奴らは、精一杯の敬語で話しかけたら何とかなる。」


「わかった。ありがとよ。」


 そう言い残し、冬華は苺愛と香枝の元へと去っていった。



「あのぉ、大変お忙しい中まことしやかに失礼奉りますが、汝共はお楽しいでござるでしょうか?」


「「んあ?」」


 苺愛と香枝が同時に冬華を向いた。


「あ、あれがあいつの精一杯かよ……?!」


 夏海が頭を抱えながら言った。


「えっと……どしたの?」


 苺愛が苦笑いしながら聞いた。


「普通に話しなよ。」


 香枝が半笑いで言った。


「あ! かえまる、今、私のこと馬鹿にしたでしょ!」


「で、なに?」


「あ、そうだった! そのポーカー楽しい?」


「うん、楽しいよ。冬華プリンちゃんもやる?」


「あ、いや、難しそうじゃないですか。」


「ポーカーのルール教えようか?」


「いや、ポーカーは知ってるんですよ。ただ……あなたたちトランプのカード使ってないじゃないですか!」


「だって、


「「トランプなかったんだもん!」」


 苺愛と香枝が声を合わせて言った。


「いやいや、だからって想像上でやるエアーポーカーやらなくても!」


「「(エアーポーカー……?)」」


「だいたい、エアーポーカーってなんだよ!」


「うるさい奴だなぁ。」


 香枝が頬杖をつき言った。


「と、一休みしたところで、さぁ! お主達、何して遊ぶ?!」


 智絵が部室の真ん中に立ち言った。

 他の5人が渋々その周りを体育座りで囲んだ。


「「「「「(あれは、休みだったのか?!)」」」」」


「で、先着順だぞぉ!」


「はい!」


 冬華が間髪入れずに元気に手を挙げた。


「お、どうしたんだい、キャサリン?」


「おいおい、君が先着順って言ったから手を挙げたのになんだ


「「「「やめろ、やめろー!」」」」


 4人の総ツッコミを喰らい冬華は座った。


「で、冬華プリン、何がしたいんだ?」


「ゲームセンターに行きましょう!」


「賛成~。」


 癒怡が賛同の声を上げた。


「いいね~!」


「よし、今からゲームセンター行こう!」


 それに続き、夏海と智絵も賛同した。


「で、智絵と苺愛さんはどうする?!」


 冬華は2人に詰め寄った。


「「い、いや、遠慮しとく。」」


 2人は面喰いつつ断った。


「え~! 2人ともいかないの~!」


 冬華が大きな声で言った。


「よし、じゃあ4人で行こう! 2人とも留守番よろしく~!」


 智絵はそう言うと自分の鞄を持って部室を出て行った。それに続き癒怡、夏海、冬華が出て行った。


「……。」


「……。」


 部室には智絵と苺愛が体育座りのままポツンと残された。


「ねぇ、かっちゃん? 多分、今、考えてること一緒だよね。」


「そうですね。」


「「朝5時に開いてるゲーセンなんかねぇよ……。」」


「よし、遊ぼっか!」


「はい!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る