部の名前、笑部ってなんだよ?! ダサすぎだろ!

翌桧

「1羽目だよ~。」「鳥かよ!」

「お久しぶりでーす!」

 

 冬華とうかが勢いよく部室のドアを開け第一声を放った。


「おはよーございまーす。」

 

 それに続き香枝かえがあくびをしながら部室に入ってきた。


「君たち! 自分が後輩ということをもう少し自覚しろ~! 私は君たちをそんな子に育て


「お~! これはこれは、2年生ながら先輩兼部長の智絵ちえさんではないですか! おひさしぶりですぅ!」


 そう言うと冬華は、部室の端にある椅子から勢いよく立ち上がった智絵の手を掴みブンブンと振った。


「“先輩”は役職じゃないから!」


「それだったら、“部長”も役職じゃないじゃないですか?!」


「“部長”は役職なの!」


「じゃあ、“先輩”も役職で合ってるじゃないですか!」


「合ってないの! それ、セットにしないで! てか、人がボケたときは最後まで聞いて!」


「あんた、それ自分で言ってて恥ずかしくなんないの?」


「素晴らしいツッコミ! お~! これはこれは、誰かと思えば今年から同級生になった夏海なつみさんじゃないですか! 23年ぶりですねぇ~。」


 冬華は,今度はソファーに寝ころびファッション雑誌を読んでいた夏海の手を掴みブンブンと振った。

 手を掴まれたせいで、夏海は持っていたファッション雑誌が顔に落ちた。


「同窓会か! あと、私は留年してないから今年も先輩だから! 1つのセリフにボケを2つも入れるな!」


 夏海は座り直し、前のめりになった。


「今年は先輩なんですか?! え、けど、去年は先輩じゃなかったじゃないですか?」


「冬華が私と出会ったの今年だから! 去年も先輩だったんだよ!」


「じゃあ、来年は同級生になるんですか?」


「ならねぇよ!」


「じゃあ、いつになったら同級生になってくれるんですか?!」


「なんでキレ気味なんだよ! 一生先輩なんだよ!」


「え? 普通に嫌なんですが。」


「嫌って何?! てか、真顔やめて!」


 夏海が言い終わった瞬間部室のドアが開き2人入ってきた


「許可証~。」


「“おはよう”でしょ。」


「その天才的に韻を踏むボケと穏やかなツッコミは3年生の方々ですね!」


 冬華は俊敏に半回転して部室のドアを向いた。


「私らとの対応の差!」


「ナイスタイミング! ちょうど、夏海さんの相手に飽きてたとこなんですよ!」


「相手してたのこっち! てか、飽きたって何?!」


 夏海は自分を指さしソファーから立ち上がった。


癒怡ゆいさ~ん、苺愛もあさ~ん! 夏海さんがいじめてくるんですぅ!」


「ぅわ~。 なっちゃん(夏海)海底~。」


「“さいてい”ね。」


 苺愛が一瞬でツッコミを入れた


「あぁ! もう、面倒臭い!」


 夏海はそういうと、またソファーに寝ころびファッション雑誌を読み始めた。


「あーあ。かっちゃん(香枝)のせいでなっちゃんねちゃったじゃん。」


「あ~。やっぱり巻き込んできましたか……。」


 香枝が机にうつ伏せたまま気だるげに応えた。


「まぁ、一番ふって欲しそうな顔してたからねぇ。」


 癒怡はそう言うと香枝の元へ行き、香枝の肩を揉んだ。


「いや、顔うつ伏せてたんですが……。」


「どしたの? 今日元気ないねぇ。」


 香枝は癒怡が肩を揉み終わるのを見計らって、座ったまま伸びをした。


「ただ、眠いだけですよ。」


「どうしたの、寝不足?」


 苺愛が香枝に近づきながら言った。


「ふぅ……そりゃ、当たり前じゃないですか! 今、朝の4時ですよ?! 頭おかしいんですか?!」


「まぁ、普通に補導される時間だしねぇ。」


 癒怡は自分の腕時計を見た。


「あ、私来る途中補導された~。」


 夏海がファッション雑誌から目を離さずに言った。


「え、大丈夫だったの?」


「バーンと一発で済みました。」


「「「「「(バーンってなに……?)」」」」」


 心配していた苺愛でさえ黙った。


「って、そうじゃなくて! なんでこんな早い時間に集合させたんですか?!」


 香枝は机をバンと叩いた。


「「「「「(バーンってなに……?)」」」」」


「いや、もういいから! てか夏海あんたは発言者なんだから疑問持つなよ! で、なんでこんな早い時間に集合させたんですか?!」


「あ、そういやなんで今日は集合早かったの? 智絵。」


 夏海がソファーに座り直し言った。


「それは、今私が質問したところです!」


「お、香枝? “それは、今私が質問したところです!”って網膜してるね。」


「網膜はモノ言いません! あと、それ既に言いましたから!」


「あー、礼はいいよ、礼はいいよ。」


「はぁ~。もう疲れました。まだ朝の4時ですよ。夏休み中の……。」


「そうだよね~。夏休み真っ只中の早朝に集められて私たちは大変


「「「「不快です!」」」」


 香枝と智絵以外全員起立して声を張り一斉に智絵を見た。いや、睨んだ。


「卒業式かよ……。」


 香枝は座って頬杖を突き溜息をついた。


「え、えっとですねぇ……部長権限です……。」


「「「「「ぁん?!」」」」」


「す、すいません!」


「で、話戻しますけど、なんでこんな早い時間に集合させたんですか?」


 冬華が智絵に少しずつ近づいた。


「だから、その話してたんだよ!」


「お、香枝かえまるが復活した!」


「あ! 癒怡ちゃんの豆知識コーナー! ズガガガドスドス!」


「工事現場か!」


「はいはい。“ドンドンパフパフ!”でしょ。」


 苺愛が間を置かずツッコんだ。


「さぁ、今世紀も始まりました。あれのそれによるこれのためのどれ? 癒怡ちゃんの試し斬りウォーター! 容疑者、数学迷路トナカイ暴れるって銃戦士が自分だよ! 昨日富士山お金ひじきジョーカーメディア~!」


「……苺愛さん、翻訳お願いします。」


 香枝が頭を抱えながら言った。


「しょうがないなぁ、その替わりあとで宝くじ当選してね?」


「ちょっと無理すぎるので遠慮しときます。」


「冗談冗談。さっきのを翻訳してほしいんだね?」


「はい。」


「癒怡ちゃんの豆知識コーナー! そういや、旧約聖書の中に“カマエル”っていう天使がいるんだよ! 以上癒怡ちゃんの豆知識コーナーでした~!」


 苺愛が癒怡の声真似をしながら言った。


「へ~。……だからどうしたんだよ!」


 香枝は前のめりになった


「い、いや、私に言われても……。」


 苺愛が香枝に迫られ少し怖気づいた。


「あ、すいません。」


「で、話進めますけどなんでこんな早い時間に集合させたんですか?」


 冬華は更に智絵に詰め寄った。


「いや、今はその話してなかったんだよ!」


「あれ、かえまるがツッコんでくれない。」


「1秒前にツッコんだじゃん!」


「いや、1.23秒前の話だよ!」


 冬華は止めたストップウォッチを見た。


「え、私のは1.36秒なんだけど。」


「こっちのは1.33秒。」


「1.49秒。」


 それぞれが止めたストップウォッチに表示された数字を読んだ。


「なんで、みんなストップウォッチ持ってんだよ!」


「あれ? 私今止めたんだけど0しか表示されてないんだけど!」


 智絵が語調強めに言った。


「それ、左のボタン押しちゃったんでしょ!」


「え?」


「右のは“スタート・ストップ”のボタン、左は“リセット”と“よくわからないモード”のボタンなんですよ!」


「「「「(よくわからないって……。)」」」」


「ほんとだ! 説明書に書いてある!」


「説明書あるのかよ! てか、今箱から出しましたばっかりですよね!」


「ほんとだ! 左は“リセット”と“よくわからないモード”のボタンって書いてある!」


「「「「(よくわからないって?!)」」」」


「“よくわからない”って書いてるの?!」


「「「「(知らなかったのかよ!!)」」」」


「うん。これ来るときにコンビニで買ったやつだから。」


「で、


「「「「「なんでこんな早い時間に集合させたんだ?!」」」」」


「えっとぉ……。」


 智絵が全員からのツッコミに怯んだ


「「「「「えっと?!」」」」」


「はぁ……。わかりましたよ! 自供しますよ!」


「なんでキレてんだよ、この人……。」


 智絵は部室の真ん中に立った。


「いやー、もう夏休みもあと1ヶ月とちょっとしかないじゃないですか?」


 問いに対して香枝以外の4人が頷いた。


「まぁ、それでですね……この中で夏休みの宿題終わった人~?」


「「「「「……。」」」」」


「やはり、貴様ら終わっていなかったのか!」


「終業式、昨日でしたからね!」


「ということで!」


「「「「「まさか?!」」」」」


「今日は目一杯遊びましょう!」


「「「「やはりそうなるかぁ!」」」」


「な、なぜそうなるんですか?!」


「よし、遊ぼ~!」



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