第4話:霊媒師

 M大附属高校はそれなりに歴史のある学校だが、校舎自体は真新しい。何でも三年ほど前から改築が始まっていて、僕が入学した今年にようやくそれが終了したのだ。

 そういう訳で、この高校の屋内設備は非常に充実していた。


 校内はざっと三つに分かれている。


 一つは「高校棟」。

 現在僕が毎日通う、一年E組の教室もここにある。高校三学年分の教室や理科室、視聴覚室などが入っている、三階建ての建物だ。

 二つ目は「共用棟」。

 ここには音楽室や家庭科室、美術室など副教科系の教室や、食堂に図書室などの全体共用の施設が入っている。ここも三階建て。


 そして、三つめの「中学棟」。


 実はM大付属は中高一貫の学校で、総生徒数は二千人を超える。大学の附属校でもあるので、生徒の役七〜八割は内部推薦でそのままM大学に進学することになる。

 まさしく典型的なエスカレーター式の学校と言えた。


 その中で、約八百名ほどの中学生が通うのが、この中学棟だ。六階建ての縦に長い校舎で、五、六階にはいくつかの多目的余った教室が入っている。


 そして——僕らオカルト部の部室は、その多目的教室のうちの一つを使ったものだった。


 いつもならエレベータを使うのだが(四階以上を利用する場合エレベータの使用が許可されている)、流石にこんな夜中に堂々と、管理された電力設備を使用する訳にはいかない。

 僕は不自由なこの足で六階分の階段を登る羽目になった。


「ほら頑張って。三十分前の全力疾走を思い出したら楽なもんでしょう」


「自分はふわふわ浮いてるからって調子に乗りやがって……」


 とか。

 夜の学校で、幽霊に対してそんな呑気なことを言いながらも、僕らは無事に部室の前に到着した。


「さて……」


 津久茂先輩は漏らすようにそう言うと、ノックもせず、そのドアノブを回した。


 オカルト研究部。

 何をやってるのか分からない部活。


 公的な活動内容としては、科学的に証明できない世の中の事象に関してウンタラカンタラ……どうでも良いだろうか?


 まあ、事実どうでも良い。

 たった四人の部活、内輪でそれぞれよく分からんことをやってるだけだ。


 僕の他の部員は全員が先輩という、学年に偏りのある部活ではあるが——個人的な意見を言わせて貰えば、結構楽しくやっているつもりだ。

 津久茂先輩含めて、後輩であるところの僕に対しては、優しく接してもらっている。


 ただし、変人揃いである。そこは否定できない。


「……お邪魔します」


 部室に入った途端、唐突に二人分の視線に晒され、僕は半ば意識せずに、上ずった声で言った。


 二人分。

 つまり僕と津久茂先輩を除いた、残り二人の部員——残り二人の先輩が、すでにこの部屋には居た。


 津久茂先輩はそんな二人に、開口一番ぶっきらぼうに声をかけた。


「早かったな」


「……急かしたのはあなたでしょ?それに『領場がいよいよ大変だ』、なんて言い方をされたら、急ぎもする」


 顔も向けず、端的に答えたのは八百萬やおよろず羽沙うさ先輩だった。


 津久茂先輩と同じく僕の二こ上で、イミナさんとは種類の違った妖艶さを醸し出す女性だ。

 腰下まで届こうという長髪を頭の後ろで一本にっていて、いつも気だるそうな、活発とは言えない目をしている。

 部室でも特に無口な人で、大抵は窓際でよく分からない本を読んでいる——オカルト的な意味ではなく、「ジンバブエの経済学」だとか、普通に意味不明な本だ。


 とはいえ、冷たい人ではない。

 話しかければ普通に喋ってくれるし、意外と漫画の話とかも振ってくれる。自販機の前で鉢合わせた時に飲み物を奢ってもらったこともある。


 ……あと、これは余談だが、彼女と津久茂先輩は付き合ってるんじゃないかという話がある。

 主に二人が在籍する三年で囁かれている噂だが、僕はと言うと、結構信憑性ありそうだな、とは思っていた。何というか、お似合いな雰囲気ではあるな、と。


「——レンちゃん、大変だったねぇ。腕、大丈夫ぅ?」


 と——横合いからするりと僕の脳裏に入り込む、気の抜けるほんわかとした声。

 両手で救急箱を持って、たたた、と可愛らしくこちらに駆け寄って来る少女——身長百三十センチくらいだが、これで先輩である。オカルト部の残り一人、小山舞美おやままみ先輩。


 小柄な人で、何だったら小学生くらいにも見える人だ。

 黒髪を胸元まで伸ばしていて、伸びた前髪で目元はほぼほぼ隠れている。 


「ほら、血が出てるよぉ。絆創膏貼らないと」


「あ、いや……」


 腕、というのはイミナさんがハドソン(エルザスの方かも知れない)に撃ち落とされた時、コンクリに擦った怪我のことだ。

 五メートルくらいの高さからの落下だったが、それにしたって十分にヤバい高さだったと言える。腕を擦りむいただけなのが奇跡というくらいだった——代わりというか、その擦過傷はもはや擦過傷と言えないレベルだが(肉が抉れてるんじゃないのか、これ)。


 とはいえ、命に関わる傷でもないし、アドレナリンが出ているのか大して痛くもなかったので、僕は一度遠慮しようとした。というか本音を言えば、異性、それも部活の先輩に絆創膏貼ってもらうというのが、まあまあ恥ずかしい。


 が、小山先輩は聞く耳を持たなかった。


「遠慮しないのぉ、ばい菌入ったら大変でしょぉ」


 ……まあ、確かにばい菌入ったら大変なので、結局僕は大人しく腕を差し出した。

 まるで子供をあやすような理論だが、傷口から入るばい菌を馬鹿にしちゃいけない。病気は皆そこからやってくる。


「……すみません」


「いいのいいの。消毒するよぉ」


 そう言って、小山先輩は傷口に消毒液を垂らす。まあ、あんな僕の理解が及ぶ埒外の出来事を経験した後なので、今さら消毒液が沁みる痛みなどあって無いようなもんだった。

 ペタペタとガーゼを当てて、上から大きい絆創膏を貼って、処置完了——こういう時の手際の良さは、素直に尊敬する。


 ……ちなみに、普段僕の近くにいる女性は、残念なことにこういった庶民的スキルを一切所持していない。テレビの予約は出来るくせに掃除機はかけられないという、典型的なダメ女だ。

 繰り返す、事実、ダメ女だ。


「はい、完了」


「すみません……ありがとうございます」


「良いってば。こういう時のための救急箱だしぃ、それに……今問題なのはそんなことじゃ無いのよねぇ」


 手をひらひらと振りながら、小山先輩は言う。


 一連の会話を聞いてもらうだけで分かると思うが、とても優しい先輩だ。彼女の僕に対する気づかいや思いやりは、親が子に注ぐものにすら近い。


 ……のだが、彼女を紹介するならば、一つ避けては通れない「真実」がある。

 小山先輩は別に、優しい人、、、、というわけでは無い——僕にとっては間違いなく「優しい先輩」ではあるが、しかし万人にとっての「優しい人」では、断じて無い。


 言ってる意味が分からないだろうが、この後すぐの小山先輩の言動を見てもらえればすぐに理解できるだろう。

 僕の腕の傷に対する処置が終わったことを自分の目で確認した彼女は、すぐさまに振り向き、


「——なぁコラ、てめぇだよ津久茂ォッ!」


 ……と叫んだ。

 豹変した。

 それはもう、あのハドソンすら凌駕するような勢いで。


「てめぇレンちゃんと一緒に居たんだよなぁッ!なのに何でレンちゃんは怪我してるんだッ⁉︎腕から血ぃ出してんだッ⁉︎てめぇ何してやがった————ッ!」


「ああ、その、何だ。初っ端に不意打ちで食らってしまってな。少々タイムラグがあった」


「このド低脳が————ッ‼︎」


 激昂し、津久茂先輩の首根っこを両手で掴み、ブンブンと揺する小山先輩。その有様は、とても僕の腕に絆創膏を貼ってくれた人と同一人物とは思えない。


 彼女は端的に、こういう人、、、、、なのである——有り体に言って、接する人によって態度が大きく変わる。

 もう少し具体的に言えば、同い年以上の異性、、、、、、、、に対して、とても攻撃的な人なのだ。僕は年下なので安全圏、八百萬先輩も同性なので安全圏。この部屋では津久茂先輩だけが、その被害を被っている。

 

 つまり、変な人だ。

 慣れると慣れるが、変な人。


 ……しかし、悲しいかな、彼女の小さな体と細い腕には、男一人を思うままにするほどの力は無い。現に津久茂先輩は、特に苦しそうな様子もなく、面倒臭そうな表情を浮かべているだけだ。


 というか、津久茂先輩をブンブンしようとする小山先輩の方が、逆に空中を体ごとブンブンしていた……何言ってんだ僕?


「あの小山先輩、もうその辺にして……僕は助けてもらったんですから」


「……そぉ……?……でもほら、実際レンちゃんは怪我しちゃったわけだしぃ」


「いや擦り傷だし、そもそもこれ、襲われたとか関係なくて転んだようなもんですから」


 実際、腕の傷はビルの屋上に落ちた時に擦ったものだ。逃げる最中の、要は事故のようなものである。


 それに——僕の脳内は、こんな日常ギャグみたいなシーンにおいても、未だ混乱の二文字に埋め尽くされている。それをさっさと解決したいというのが、本音だった。


「小山先輩、それに今は……」


「今は」

 

 気だるそうな声で——津久茂先輩が、僕の言葉を引き継いだ。

 首根っこを小山先輩に掴まれたままなので、非常に締まらないが。


「今は他に、山ほど聞きたいことがある——だろ?領場」


「……はい」


 僕は頷いた。

 聞きたいことがある……だからこの夜中に、わざわざこんなところまでに忍び込んだのだ。


「——その前に私も訊きたい。その女、誰?」


 と、言ったのは八百萬先輩。

 その目線は、他の誰でもない、僕の後ろ——イミナさんに向いていた。彼女だけでは無く、津久茂先輩も、小山先輩も同様だった。


 イミナさんの方を。

 幽霊であって、僕以外には見えないはずのイミナさんを——見ている、、、、


「……イミナさんが、見えるんですか、皆さん」


 もはや分かりきった事だが、それでも僕は先輩たちにそう尋ねた。


 一方でイミナさんは、一言も言葉を発する事はなく、どころかこの部室に入ってから、一度として先輩たちの方を見もしていなかった。まるで此の期に及んで、「私はこいつらと関わる気は無い」と主張しているように。


 僕の質問に答えたのは、八百萬先輩だった。


「はっきり見える。私たちは今までにだって、その女の存在は感じていた」


「感じていた?」


「領場の近くに、別の存在を感じていた——その女がそこにいる、、、、、って事は知ってた。私たちみんな。それでも、姿は見えて無かったけど」


「……えっと、つまり」


 津久茂先輩や他二人の言動の端々から察するに——この部活の先輩方は、全員がどうやら、何かしら不可思議な力、、、、、、、、、、に精通しているらしい。

 不可思議な——霊的、、な力に。幽霊であるところのイミナさんを認識するとか、そんな力に、だ。


 見る事はできなかった、と八百萬先輩は言う。

 それはきっと本当なんだろう。イミナさんは僕の目から見ても、この部室で姿を現したことが一度も無かった。


 そこの所のシステムは不明だが、幽霊の能力とかで、イミナさんは時たま自分の姿を隠していた。

 だが同時に、そんな時でも彼女はしっかり存在していた。


 姿を消しているからと言って、別にイミナさん自身が消えているわけでは無い。呼びかければ大抵出てきてくれていたし、目線というか、ある種彼女の温もりのようなものが絶えた覚えもない(幽霊に温もりってだいぶおかしい表現だが、感覚的にはそんな感じ)。


 存在は、、、していた。

 そしてその存在を、先輩方も認知していた——という事だろうか。

 その、霊的な力、、、、で。


「概ね、正解」


 八百萬先輩は、そう言って僕の考えを肯定した。


「……でも八百萬先輩、それならイミナさんは……例えば、僕の知らないところであなた達に嫌がらせをしたり、悪事を働いてたとか、そういう訳じゃ無いんですよね?」


「ええ——私たちがその女から何かされた事はない。繰り返すけど、姿を見るのも初めて」


「だったらどうして、そんな風にイミナさんに、敵意に満ちた視線、、、、、、、、を送るんですか?」

 

 それを"敵意"と一概に言っていいものか、正確には、熟練した兵士でも無い僕には判断しかねる。

 だが、先輩方三人がイミナさんに向ける視線が、僕に向けられたものと違うのは確かだ。


 優しさじゃ無い。気づかいでも無い。

 僕には、その目線に込められたものが、津久茂先輩がハドソンらに向けていたものに酷似していると——そう感じられたのだ。


「敵意も向けるさ。まあ、実際は敵意ってほど剣呑な感情でも無いが、似たようなもんだ。ニュアンス的には、警戒って感じかな」


 いつもの調子で、いつもの口調で答えたのは津久茂先輩だった。


「……警戒って?」


「領場よ、一つ確たる事実というやつを教えといてやる。お前はその女を幽霊として認識して、当たり前に接している——親しんですらいるようだがな」


「親しんで」


 ……いるか。それは流石に否定できない。


「……でも、それの何が間違ってるんですか?」


「間違っていない。その女は事実、死してこの世を彷徨う者、幽霊だ。しかし、だからこそ忠告を禁じ得ない」


 俺ですら。

 親切に忠告してやりたくなっちまうほどのことを、お前はやってるんだぜ——と。

 津久茂先輩は、至って真面目に続ける。


「その女はただの幽霊じゃ無い——悪霊、、なんだよ。強力な、強力な悪霊だ。魂を喰らう、人を取り殺す存在だ」


 僕は——咄嗟に、振り向いてイミナさんの顔を見た。


 悪霊、という単語の正確な意味は分からない。

 それがどれだけ悪どい存在で、または、どれだけ害のある存在なのかも分からない。僕にそんな知識は無い。

 ただ、津久茂先輩の語調から、少なくともそれが全く無害な存在では無いことだけは、理解できた。


 イミナさんは——表情を変えない。

 冷や汗の一つもかいていない。

 だがその瞳には、何か、、が宿っているような気がした——十年連れ添った僕だから分かったような、あえて言うなら、それは罪悪感に近い。


「ふん」


 そんな僕らの様子を一瞥して、津久茂先輩は腕を組み直し、鼻を鳴らす。

 小山先輩は首根っこを掴むのをやめていた。たたた、と救急箱を元の位置に戻してから、八百萬先輩の隣に腰を下ろした。


「日本じゃあ、昔から世界中あらゆるモノに神様が宿るって考え方をする。自然の恵みも災害の猛威も、それぞれを司る精霊がいるという、多神教の考え方だ」


「多神教……って、あの、何の話ですか?」


「お前の聞きたい話だよ。まあ聞け。昔の日本には、精霊を祀り声を聴くという連中がいたんだ。迷信じゃ無く、大マジに魔法のような力を使うやつらがな」


 魔法のような力——というのは。

 例えば炎を操ったり、空を飛んだり——例えば、死後に魂をこの世に、、、、、、、、、残したり、、、、


「……つまり、魔法は実在する?」


「少なくとも昔の日本にはあった。もっとも魔法なんてファンシーな呼ばれ方はして無いがな——そういう力は、呪術とか霊媒術とか呼ばれたそうだ」


「霊媒——」


 聞き覚え、があった。

 伏線にもならない、ついさっき聞いたばかりの単語だ。確か、あのビルの屋上で津久茂先輩自身が言っていた。

 俺は霊媒師だよ、、、、、、、、と。


「だが、魔法使いでも人だ。ナニもするし子も残す。そいつらにも子孫はいる、この現代にすら普通に繁殖——そう、繁殖してる。そして、その子孫たちは、程度や規模は違えど同じく魔法のような力を使うんだ。霊媒術、、、をな」


「……それが」


「それが、俺だ」


 俺や——こいつら、、、、だ。

 そう言って、津久茂先輩はこの部屋を見回す。つまりその目が向いたのは、この部屋にいる人たち——八百萬先輩や、小山先輩だ。


「森羅万象、あらゆるモノに宿るとされる何か、、精魂せいこんっつうんだがな。その精魂に寄り添い、精魂の力を借りてこの世の法則を超えた力を使う——つまり霊媒術を使う、俺たちのような連中を、そのまま霊媒師と呼ぶ」


 言いながら津久茂先輩は、顔の前に指を立てた。

 すると、次の瞬間に彼の指先に、マッチ棒に灯るような大きさの、つまり極小の炎が出現した。


「覚えておけよ。お前がその女とともに居たいならば、お前はこう、、ならなきゃいけない」


 その女、というのは言うまでもなく、僕の後ろに浮遊するイミナさんのことを指している。


「……イミナさんと一緒にいるなら、僕がならなきゃいけない?どういう事ですか」


「だからな、その女は悪霊なんだよ。色々端折はしょるが、悪霊は本来この世にあまねく怪異を引き寄せるものだ。これから先、お前らは確実に身を守らなきゃならない事態に巻き込まれる——今日のようにな」


 僕は——思い出す。

 思い出そうとしなくても脳裏に浮かび上がってくるような、まるでトラウマのようなあの二人組。ハドソン、エルザス——凶暴さを絵に描いたような、僕とイミナさんを狙い襲ってきた、あいつら。


 あの二人は人間だったが、しかし人間の領分を確実に飛び越えた「魔法」を使ってきた——それが、津久茂先輩の言う"怪異"ならば。


 イミナさんのという「悪霊」が引き寄せるモノ。

 確かに、あんなものがこれからも僕の前に現れるならば、今のままで身を守れる気はしない。


「だから、今その対処を話してるんだよ」


 身震いする僕を前に、津久茂先輩はいかにも先輩らしく、安心させるように言う。


「霊媒の術を身につけろ。お前にはもはやそれが不可欠だ」


「霊媒術……あんな魔法みたいなことが、僕に出来るんですか?」


「心配せずとも、お前には才能がある。手ほどきはしてやるさ。この二人も協力する」


 言われて僕は、この部室にいるもう二人の先輩の方を見た。

 小山先輩は頷いて、


「うん、教えてあげるよぉ。手取り足取りぃ」


 と言った。

 相変わらずほんわかとした口調で。


「……八百萬先輩も?」


「ええ、ちゃんと教える。霊媒術は大事」


 八百萬先輩もそう言って頷く……マンツーマン指導、というか三対一の指導体制か。


 僕にあんな魔法みたいなことが出来るのか?という疑問は、もちろんある。

 しかし、考えてみれば、僕はイミナさんという幽霊を見ることは、少なくとも出来ている。そう思えば、確かに多少くらいなら、そういう「才能」は持っているのかもしれなかった。


 それに。

 この三人の先輩方を、僕はそれなりに、順当に信頼している——この人たちの下なら、魔法でも使える気が、しないでも無かった。

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