第5話 フュアリという美少女

「ああ、疲れたよー」

 教室に戻った未冬は机にへたり込んだ。隣の席のエマ・スピットファイアが、ははっと笑う。

「初めての戦闘訓練だものな。でも面白かっただろ」

 それがね、と未冬は身体を起こす。

「私って、天才だと言うことが分かったんだ」

「はあ?」

「だって、撃つ弾、撃つ弾、全部的に当るんだもの。いやー気持ちよかったー」

 いよいよ胡散臭そうな表情のエマ。

「二、三発頭に当ってるだろ、絶対。まあ、現実逃避したい気持ちも分かるけど」


「ううん、本当なんだよ」

 そう言ったのは、未冬と一緒に回っていたフュアリ・ホーカーという小柄な少女だった。彼女もまた未冬と同じく後期からの転校生だった。ぱっちりした目と、小さな唇。肩までの褐色の髪が緩やかに波打っている。一言で言えば、人形みたいですごく愛くるしい。


「もう、尊敬しちゃうよ。格好良すぎるよ、未冬ちゃん」

「い、いやあ。それほどでも。フューちゃんだって結構当ててたじゃん」

「あれはまぐれだよ。実力じゃないよ。未冬ちゃんに言われたら恥ずかしいよ……」

 はしゃぐ二人を前に、エマが虚ろな目になっていた。

「お前ら、以前から知り合いだったのか」

 二人は顔を見合わせた。

「ううん、違うけど。ま、今日から戦友ってとこかな」

 単純なやつらだな、とエマは呆れた。



「なるほど。砲兵ならいいかもな。来年からは志望部隊に合わせた教育になるから、早いうちに決めておく方がいいと思うし」

 未冬の話を聞いたエマは腕組みをして、頷いた。

「ところで、エマはどうするの、進路」

 え、と顔を上げた。そして少し口ごもる。

「私は……。もう、地上だったらどこでもいい」

 急に怯えた目になって、言った。

「だって高いところ、怖いんだよっ」


だったら、その飛行能力、私にくれないかなっ!未冬は心の中で叫んでいた。

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