第2話 「人類飛翔に関する考察」
ここの話は余談である。人が空を飛ぶ、という事に違和感を感じない方は、このまま第3話に進んでもらっても一向に構わない。
ただSFというからには、科学的な考証らしきものがあるべきだ、という方のために、この第2話は存在するのである。
興味がある方は
人類が大地を失いつつあった頃と時を同じくして、人は飛翔する能力を得ようとしていた。
翼によらず、空中浮遊を行ったという報告が各国機関に相次いだ。そして、調査の結果ほとんどの場合、それは事実であると確認されたのだ。
長い間、その原因は不明であった。
最初の報告から百年ほど後、ある仮説が唱えられた。
提唱者はアリシア・フェルマー。欧州連合王国の科学者である。
彼女によれば、飛翔者の体内にはある物質が蓄積されているというのだ。後にフェルマー因子と呼ばれるその物質。蓄積された原因も、成分も不明のままだが、確実に存在する事だけは各国の科学者間で共有されることになった。
その物質が何らかの方法によって重力制御、もしくは時空の歪曲による空中飛行を可能としている、それだけは確かな事なのだ。
そして現在。人類の約3割は飛翔可能だと言われる。
彼らは通商、および武力を用いた外交交渉つまり戦争に従事することになる。なぜなら、都市空母において、最も入手困難なものは新たな資源であるからだ。
戦闘機を一機製造しようと思うのなら、都市の一部を分解し、戦闘機用の資材に転用しなくてはならない。
さもなければ、戦闘空母ではなく資源サルベージに特化した他の都市から法外な値段で購入しなければならないのだ。
つまり彼らに高性能銃器を配備し、戦闘機代わりに使用する方が現実的だと言うことだ。これは基本的にどこの空母でも事情は同じだった。
こうして、都市国家とでも言うべき空母群は海ばかりとなった地球上を、時に争い、時に手を結びながら、放浪を続けているのだ。
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