第三章 春季下越地区大会 五 山並VS村上商業

 笛吹を先頭に山並のメンバーがコートに入って来た。青いユニフォームも良く似合っていたが、この白いユニフオームも劣らず良く似合っている。


 センターラインを挟んで両者が向かい合った。


 ボールを持った主審が一礼すると、それに合わせて選手も一礼した。


 それぞれ近い位置にいた選手が互いに握手を交わすと、サークルに沿ってポジション取りをした。


 平均身長は互角に見える。言い換えれば、洋は山並の平均身長を殊更下げていると言うことだ。


「さあ、始まるぞ」


 正昭がそう言うと、


「洋さん、頑張って」


 と、信子は手を合わせて祈った。


 主審がサークル内に入った。


 サークル外にいる選手が身構えた。


 ジャンプするのは山添。相手の身長は185センチ程度。


 洋は山添から見て左斜め前にポジションを取り、誰よりも腰を落として身構えた。

主審がボールを上げた。


 ジャンプボールを制したのは、洋を狙い撃ちしてボールを落とした山添だった。

洋はボールをキープすると、直ぐさまドリブル、ゴールに向かった。


 洋を追いかけたのは、さっき洋に敵意を見せた背番号6の男。身長は175センチくらい。洋はこのまま1ON1の勝負に出るのか?


 洋の右目尻に目(さっか)が映った。


 洋のドリブルが加速した。


《くそっ》


 背番号6は胸の内でそう呟いた……


 と、その瞬間、洋はラグビーのオープン攻撃のようなパスを出した。


 ノーマークの目は難なくレイアップを決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る