第三章 春季下越地区大会 五 山並VS村上商業
背番号6は洋をチラッと見ると、
「チッ」
と、聞こえるように舌打ちをした。
チームメイトからスローインを受けると、背番号6は洋を睨みながら、ドリブルをしてゆっくりと近づいて来た。どうやら、彼は村上商業のポイントガードのようだ。
洋は抜かれないように腰を落として身構えている。
背番号6が突進して来た。
洋もすかさず対応、しっかりとドリブルコースを潰すと、これ以上のドリブルは無理と思ったのか、背番号6はボールをホールドした。
洋は相手に触れないようにディフェンスしながら、あわよくばスティールを試みようと考えた……
その矢先だった……
「ピー」
「あいつ、わざとやっただろ」
主審の笛が大きく響いたとほぼ同時に、日下部が怒りを露わにした。
「よせ、カベ」
「先生……」
「君、大丈夫か?」
主審が尋ねると、跪(ひざまづ)いていた洋は自分の唾を少し指に付けて見た。
「ちょっと口の中を切ったみたいですが、大丈夫です」
主審は洋の傷が大したことないのを確認すると、コート上の選手に一旦ベンチに下がるように指示、その後(ご)、副審二人と協議を始めた。
「矢島、大丈夫か?」
藤本が声を掛けると、
「チビには良くあることですよ。でも、痛いなあ。また口内炎が出来ちゃうよ」
と、本気とも冗談とも取れることを言うと、それを聞いた菅谷は、
「そっちかい」
と突っ込みを入れた。
それが山添には笑いの壺だったのか、声を殺して笑い始めた。
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