第三章 春季下越地区大会 五 山並VS村上商業

 村上商業のメンバーが逸早くジャージを脱いだ。下からオレンジ色のユニフォームが顔を見せた。


「派手だなあ」


 鷹取が思わず呟くと、


「俺は好きじゃないな」


 と、立花が言った。


「二人とも、私語は慎(つつし)め」


 二人の会話を、日下部が窘(たしな)めた。


 円陣が静かになると、藤本は、


「いいか、新潟県は全国でも有数のバスケット大国だ。昨年・一昨年と中越平安はインターハイでベスト4に進出、五年前はインターハイで全国制覇を成し遂げている。それが立志北翔、下越地区もうひとつのシード校だ。近年は練習試合も含めると接戦ではあるが、山並が負け越している。下越地区のバスケットはレベルが高い。相手が格下格上ということは関係ない。少しでも気を抜いたら、敗北を背負うことになる。油断することなく、奢(おご)ることなく、この試合に臨め。いいな」


「はい」


 メンバー全員が返事をすると、


「じゃあ、今日の先発メンバーだが、先日練習試合で行った青チームで行く」


 藤本の号令に、メンバー全員が驚いた表情を見せた。


「話はまだ終わっていない。前半は青チーム、後半は白チームで行く。奥原、お前も今日は試合に出るから、スコアを付けるのは清水に任せろ」


「はい」


 そうして、先発を言い渡された五人がジャージを脱ぎ始めると、村上商業の先発メンバーがコートに向かい始めた。


「何だ、あいつ?」


 背番号6の選手がそう言うと、


「どうした?」


 と背番号7の男が尋ねた。


「あのチビだよ。偉そうに真っ赤なバッシューなんか履きやがって」


「舐められてんだよ。俺達は所詮優勝候補じゃないからな」


「あんなチビを先発に使われるほど、俺達は弱いって言うのかよ。ムカつくな」


「カリカリするな。どうせ、実力の無い奴が恰好(かっこう)つけてるだけだろ」


「だったら、余計ムカつく」


「おい、来たぞ」


 二人は口を噤(つぐ)んだ。

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