第三章 春季下越地区大会 五 山並VS村上商業
第三試合で戦っていたチームがコートを離れると、山並、村上商業ともにコートへと現れた。
ハーフタイムでは、タップと三角パスでのウォーミングアップであったが、今はパスを受けてのレイアップシュートを行っている。
洋も軽快にレイアップを決めた。
「さっき、統一ジャージを買いたいって洋さんが言ってたけど、確かに揃ってる方が見栄えは良いわね」
「そうだな。他にも何人かいるが、みんな一年生なんだろうな」
二人のそんな会話が聞こえたわけではないだろうが、やはり何か察したのだろう、洋が不意に正昭と信子を見つけた。
二人もそれに気がついた。
正昭が軽く手を振ると、洋は頭を下げた。
それを見た鷹取は、
「何してんだ?」
と尋ねると、
「おじさんとおばさんが見に来てるんだよ」
洋はそう言うと、少しばかり笑顔を見せた。
鷹取はスタンドを見上げた。それらしき二人がこちらを見ていた。
洋は昔のことを話したがらない。話すときはいつも言葉を選んで話す。鷹取はそれを知っていたから、洋の見せた笑顔に意外な違和感を覚えた。しかし、それは洋の問題であって、この試合とは全く別のことである。鷹取は頭を切り替えて意識をこれから始まる試合へと向けた。
アップが終わると、両チームはそれぞれのベンチに戻った。
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