第三章 春季下越地区大会 四 試合当日
正昭も信子もバスケットの体験がない。あっても、それは体育の授業くらいでしかない。随分昔の話である。
多少なりともルールが分かれば、バスケットへの理解も深まる。洋が夢中になるバスケットとは一体どんなものなのか。信子はバスケットを理解したいのではなく、洋の夢中になるバスケットを理解することで、より深く洋を理解出来るのではないかと考えているようだ。
「しかし、いいものだな」
「何がですか?」
「この雰囲気だよ。熱気があって、気合いが入る……」
「思い出しますか?」
「そうだな」
「あっ、あれ、洋さんじゃないかしら」
見ると、移動式バスケットゴール台の後ろに山並バスケット部のメンバーの顔が見えた。
「我等が真打ちの登場だ」
「洋さん、よく身長のことを口にするけど、こうして見ると、みんな背が高いわねえ」
「それもそうだが、洋が一際低いって言うのもあるだろう」
「洋さん、出番あるかしら」
「本人は、運が良ければと言っていたが……」
試合終了のブザーが鳴った。
両チーム、センターラインまで来て「有り難うございました」と挨拶を交わすと、
「さあ、いよいよだな」
と、山並メンバーの心情を代弁するかのように、正昭が言った。
本日最後となる第四試合、果たして山並と村上商業はいかなる戦いを繰り広げるのであろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます