第三章 春季下越地区大会 四 試合当日

「それより、頼むぜ」


「えっ、何が?」


「マネージャーの仕事だよ。明日は偵察だろ」


「気になる?」


「進撃の巨人のことか?」


「うん」


「気になる。目を打ち負かした奴だからな。それに、中越平安は昨年のインターハイ、ベスト4まで行った強豪だ。神代を倒して全国制覇をする夢も、まずは中越平安を倒さなければ、叶わないことだからな」


「でも、そいつが中越にいるとは限らないし……神代に行ったかもしれないし……」


「そうかもしれない。でも、やっぱり奴はいるような気がする」


「不思議だね」


「何が?」


「矢島が言うと、本当にそんな感じがしてくる」


「あっ、そうだ。俺も聞きたいことがあったんだ」


「どうしたの?」


「水家、最近どう?」


「えっ、どうって?」


「先週くらいからかな、何か様子が変って言うか……寮にいる時には、一緒に話したり勉強したりしてるんだろ」


「まあね」


「何か、変わったことってなかったか?」


「全然」


「そう……やっぱり、気のせいかな」


「ホームシックにでもなったんじゃない。私も、ちょっとそんな所があるから」


「ああっ、そうだな。その気持ちは分かるな」


「今度会った時、色々と励ましてあげれば。きっと喜ぶと思うよ」


「うん、そうだな……そうするよ。ありがとう、気を遣ってくれて」


「……友達だからね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る