第三章 春季下越地区大会 二 夏帆の迷い

「ねっ、夏帆も応援してくれるんだよね」


「えっ?」


「聞いたよ、インターハイ予選で演技を披露するんだって。夏帆も来るんだよね。山並バスケット部を応援するんだよね」


「あっ、うん」


「私も早くルールを覚えて、スコア付けたり、ライバルの戦力を調べたり……ゴールデンウィークはやっぱり練習なの?」


「うん」


「そっかあ。初日はみんなと一緒に試合に行くんだけど、二日目と三日目は清水と一緒に敵情視察に行ってくるから、試合見られないんだよね。夏帆が代わりに行ってくれたらなあって思ったんだけど……夏帆だって見たかったでしょ、矢島の活躍」


「……あっ、うん」


「三年生相手に互角に戦ったんだよ。目の最後のシュートだって、矢島がルーズボールを拾ったから出来たんだし……夏帆」


「何?」


「さっきから『あっ』とか『うん』とかしか言わないけど……」


「それは由美がベラベラ喋ってるから、返事をするしかないじゃない」


「……ああっ、さては」


「何よ?」


「気になるんでしょ」


「何が?」


「バスケットをしていた時の矢島、結構カッコ良かったものね」


「そうかな?」


「告白されちゃうかも?」


「誰に?」


「案外、上級生から誘いがあったりして。矢島って童顔だから、年上にモテそうだし……」


「駄目、絶対」


「夏帆が駄目って言っても、矢島がどう思うかは別の話じゃない……」

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