第三章 春季下越地区大会 二 夏帆の迷い

 取り敢えず職員室に連れて行ったところ、有り難いことに伊藤の姿が見えた。


 藤本はひとまず由美を伊藤に預けて、その後(ご)の対応は伊藤のアドバイスを受けることにした。


 由美から一通り話を聞いた伊藤は、まずは手紙を読むようにと藤本に伝えた。藤本は職員室の隣にある面談ルームで由美と伊藤の同席のもと、それを読んだ。


 ワープロではなく、全て手書きの文章を見て、藤本は真摯な熱意を感じた。読み終えた後は、それが更に大きく深まった。しかし、今の男子バスケット部に果たして女子マネージャーが必要なのかと考えると、入部を認める気にはなかなかなれなかった。


 最終的に藤本の背中を押したのは、伊藤の言葉であった。情熱のある子にそっぽを向くのは駄目ですと言った伊藤の言葉に、藤本は確かにその通りだと思った。何か悩み事が起きたら相談に乗ると言ってくれたことにも、藤本は励まされた。チアリーダー部顧問の助言はやはり心強い。


 山並男子バスケット部、おそらく初の女子マネージャーであろう、その誕生が今後何をもたらすのかは分からないが、楽しみではある。

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