第三章 春季下越地区大会 二 夏帆の迷い

 電気ストーブが靴下を履いている足を暖めている。


 赤い半纏を着ている背中は、何かに夢中になっている由美を醸し出している。


 由美の手の平に広がっている一冊の本。


 それは藤本が貸してくれたバスケットの公式ルールブックであった。


 入部の決断をしたのは練習試合を見終わった後、女子寮に帰ってからだった。公式戦でもないのに、どうしてあんなに夢中になれるんだろう?あんなに真剣になれるんだろう?あれがチームメイト同士の練習試合だったなんて信じられない……


 応援だって、みんな練習なんてしていないはずなのに、息がピッタリと合って……あの場にいた誰もが夢中だった。


 由美の思考と心はバスケットの熱気に当てられて火照(ほて)っていた。ベッドに横たわっても、頭がくらくらするようだった。


 しかし、それがやがて冷めてくると、まるで地中深くにあるマグマが噴火のエネルギーを溜め込むかのように、今度は自分の内側からじわじわと何か熱いものが込み上げて来るのを感じずにはいられなかった。


 居ても立っても居られない、この焦躁感(しょうそうかん)は何だろう?私は一体どうしたと言うのだろう?

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