第三章 春季下越地区大会 一 新しい部員

 由美は泣くのを堪(こら)えようと、洟(はな)をすすった。


「先日の練習試合、とても感動しました。見ているうちに胸が高鳴って、じっとしていられない気持ちになって……


 山並男子バスケット部は日本一になれる可能性を秘めていると、部活の勧誘の時に聞いた覚えがあります。


 中学の時は自分なりに頑張ったと思います。退部せずにやり抜いたことは良かったと思います。でも、決して夢中ではなかった。


 試合に出られなくても、試合で活躍出来なくても、マネージャーなら私にも出来る。私にも出来ることがきっとあるはずだと思っています。バスケットのことはまだ何も知りません。これから勉強して覚えます。だから、よろしくお願いします」


 と言うと、由美は大きく頭を下げた。


 フットワークの練習をしているバスケット部女子の人波の向こうに、夏帆達の姿が見える。


「ねえ、夏帆。あれ、羽田だよね」


「やっぱり、そうだよね」


「何やってるのかしら。まさか、入部するわけじゃないよね」


「えっ、まさか?」


 と、言いつつも、状況から判断すれば、それが一番正しいように思える。


《由美がバスケット部に……》


 夏帆は得体の知れない不安を抱きつつ、由美を見続けた。


 藤本が由美の肩をポンと叩いた。


「顔を上げなさい」


 由美は顔を上げた。しかし、視線は下がったままである。

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