第三章 春季下越地区大会 一 新しい部員
まだ五月になったばかりだし、入部する者が現れてもおかしくはない。ひょっとしたら、あの練習試合を見てバスケをやりたいと思った者が現れたのであろうか。
藤本が顔を出入口の外に向けた。
「いいぞ、入って来い」
「……ええっ!?」
「……一年七組、羽田由美と言います。今日から男子バスケット部のマネージャーとして頑張りますので、よろしくお願いします」
まさかのまさか、女子がマネージャーとして入部するなんて、全員これっぽっちも考えていなかった。中でも驚いたのは、既に顔見知りである洋、鷹取、目であろう。
これまでマネージャーがするようなことは、大体下級生が受け持っていた。少なくとも、藤本が指導するようになってからは、マネージャーという存在はないし、藤本自身それを必要とは考えていなかった。ましてやそれが女子となれば、想像することすら無かった。
これは一体どういうことであろうか?
「じゃあ、羽田、なぜお前が入部したいと思ったのか、私に話したことをもう一度ここで話しなさい」
「はい」
と言うと、由美は何度か深呼吸をしてから話し始めた。
「中学時代、私はバレー部に所属していました……」
「えっ、合唱部じゃなかったの?」
と、思わず鷹取が聞き返すと、
「あれは嘘。昔のことは思い出したくなかったから」
と、申し訳なさそうに答えた。
鷹取は半ば唖然とした。
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