第二章 新しいユニフォーム 十 ワンポイントの意味

「他はどうだ?」


 山添も菅谷も「はい」と返事をした。


 しかし、目だけは、


「作戦はベストだったと思います。ただ、それを熟(こな)せる力が俺にはありませんでした」


 と、自戒の念を込めて言った。


 作戦の立案のみならず、それを説得させる力も持ち合わせている。もしこのままバスケットを続ければ、笛吹は将来間違いなく良い指導者になるだろう。藤本は彼等の答えを聞いてそう思った。


「同じ事を繰り返すが、今日は素晴らしい試合だった。俺が何より感心したのは、日頃控え組に甘んじている笛吹、菅谷、奥原の活躍だ。選手層が厚くなれば、それだけチームも強くなる。頼むぞ」


 と言うと、三人は同時に「はい」と返事をした。


「では、最後になるが、みんなに言っておきたいことがある。一年生は特に肝に銘じてもらいたい。あれから、もうすぐ一年になる。そう言えば、二年三年は俺が何を言いたいのか分かるはずだ。また、俺の心にずっと秘めていた事をこの場を借りてお前達に言おうと思う。


 インターハイ予選に向けて、山並バスケット部は酒田で地元の有力校と練習試合をすることになった。そこに、もう一チームから参加の打診があった。それが秋田の神代(かみしろ)工業だった。


「神代って、あの王者神代ですよね。インターハイ、ウインターカップ三連覇の……」


 と、清水が驚いたように言った。

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