第二章 新しいユニフォーム 十 ワンポイントの意味

 隣のコートでは、バスケット部の女子がモップ掛けを始めていた。


 その向こうのコートでは、伊藤がメンバーを集めて何やら話をしている。おそらく、応援の大切さを説いているのであろう。


 男子バスケット部は、藤本を囲うようにして立っていた。


「今日は本当に素晴らしい試合だった。正直、これほどの勝負を見せてくれるとは思っていなかった。特に青チーム、三年生相手に1点差まで詰め寄るとは……笛吹」


「はい」


「作戦はお前が考えたのか?」


「はい」


「最後のプレス、2―2―1にした理由は?」


「1―2―1―1だと、仮に一列目を矢島にした場合、二列目は残りのメンバーを考えれば、俺と目になります。目はプレスの練習をしたことがありませんし、矢島も含めた連携を考えると、ちょっと厳しいかなと……でも、俺と矢島なら、矢島も経験がありますので……もし、このダブルチームが上手く行けば、二列目はプレスを仕掛けるよりも、パスカットの機会が増えるはずですから、そうなれば、目も問題無くプレー出来るのではないかと…」


「そうだな。俺もこのメンバーならそうするだろうな……第三クォーターの戦い方

は、その布石と見ていいんだな」


「はい」


「俺の好みで言えば、あれは決して褒められた作戦とは思わない。しかし、布石とあれば、やむを得ないとも思う。お前達は笛吹の作戦に納得したか?」


「はい」


 誰よりも早く洋が返事をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る