第二章 新しいユニフォーム 九 切り札

 ちらほらと拍手が起こった。その拍手は次第に繋がり、大きなひとつの拍手となり、体育館全体が拍手一色となった。


 両チームが並んで向かい合った。


「両者、礼」


「ありがとうございました」


 その言葉に、拍手がまた大きくなった。


 伊藤がつかつかと藤本のところに来た。


「素晴らしい試合でした。とても練習試合とは思えない、ほんとにインターハイの決勝を見ているようでした」


「こちらこそ。素晴らしい応援をありがとうございました。彼等が死力を尽くせたのは、彼女達の応援のお陰です」


「そう言って頂けるだけで、こちらも応援のし甲斐があったというものです」


「いや、本当にそう思います……あれは私が高校の時だったかな、元気が出るテレビって言う番組がありまして、その企画で滝澤高校のアイスホッケー部を応援しようと言うのがあったんですよ」


「あっ、それ、私も見てました」


「力では決してライバル校に負けていない。応援があれば、僕達は絶対勝てる。だから応援して下さいって……そうして臨んだ試合、彼等は本当に勝ちましたからね」


「あれは心底感動しましたよ。テレビ見てて泣いたのを今でも覚えています」


「応援は大切です。味方の応援を自らの力に変え、敵の応援は退(しりぞ)ける。インターハイでもこんな応援があればと思っています。でもその前に、県大会予選を突破しないと……」


「絶対大丈夫ですよ。我が部も応援に行きます。頑張って下さい」


「ありがとうございます。では、みんな待ってますので」


 と言うと、藤本はメンバーがいるところへ向かった。

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