サブマリン

第二章 新しいユニフォーム 九 切り札

　フロントコートで待機している加賀美と滝瀬がパスをもらおうと早田に近づくも、デカい二人が壁となり、パスの通り道がどれもこれもと潰されてしまう。

　と、その時だった。

「パーン」

　洋がボールを下から叩き浮かせた。

　早田が《あっ》と思ったときは、ボールは既に笛吹に渡っていた。

　笛吹はドリブルしながらリングに近づいた。

　日下部が笛吹をマーク。

　笛吹はそのままステップを踏んで、ジャンプ。シュートカットしようとする日下部の手を上手く躱(かわ)して、レイアップを決めた。

「後５点」

　笛吹が叫んだ。

　カウントダウンの雄叫びはあらかじめ決めていたわけではない。菅谷の言った「後７点」は勝ちたいと思う純然たる気持ちの現れであり、だからこそ、それは呼び水となり、青チーム一人一人の心に宿る士気を、一気に鼓舞したのだ。

　一・二年の応援女子から、

「プレス、プレス、プレス、プレス……」

　と、掛け声が起きた。

　三年の女子からは、

「山並、パパン、山並、パパン」

　と、大コールが起きた。

　スローインを入れるのに時間が掛かる。

　パスを渡しても、ダブルチームで襲いかかって来る。

　日下部は何度もドリブル突破を試み、何としても突破しようとした。

　しかし、笛吹と洋のダブルチームは初めてとは思えないほどの巧みな連携であった。

　と、その時だった。