第二章 新しいユニフォーム 九 切り札

 第三の手がこぼれ球を拾って、シュートを入れた。


 それは菅谷だった。菅谷はガッツポーズを取ると、


「後7点」


 と、叫んだ。


 さあ、本番はいよいよここからだ。


 青チームが守備陣形を取った。


 それを見た時、白チームの誰もが驚いた。


 それは明らかにフルコートプレスの陣形だった。


 今し方のタイムアウトの時、日下部はフルコートプレスについて言及した。全員まさかとは思いつつも、しかし、その可能性はやはり限りなく0に近いと、メンバーの誰もが言った。


 この一週間の練習で、フルコートプレスのディフェンスは山添を除き誰もやっていない。もちろん、それ以前は誰もが練習をしていたし、洋も経験はある。フルコートプレスの要領は心得ているだろう。しかし、このメンバーでの実戦経験は皆無だ。しかも、青チームが臨んだ陣形は2―2―1。日頃練習している1―2―1―1ですらない。しかし、彼等は敢えてそれをしてきた。まさにぶっつけ本番の作戦だ。


 エンドラインの外に出た奥原がパスを出そうとする。


 日下部がパスをもらおうと素早く動く。


 しかし、笛吹がそうはさせじと強く当たる。


 奥原には洋がピッタリとマーク。


 このままでは、5秒が過ぎてしまう。


 堪らず、早田が走って来た。


 奥原がバウンドパス。


 早田にパスが通った。


 すかさず、第二線の目と山添がダブルチームで早田をマーク。


 早田は右に左にとドリブルをして何とか抜きに掛かろうとするも、悉(ことごと)くドリブルコースを潰されてしまう。

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