第二章 新しいユニフォーム 八 それぞれの作戦

 片や、白チームでは……


「あいつら、インサイドからアウトサイドの攻撃に切り替えたな」


 加賀美が開口一番にそう言うと、


「でも好都合だろ。こっちの考えたとおり、リバウンド勝負出来るんだから」


 と、滝瀬が言い、


「しかし、誘いには乗って来ないな」


 と、早田が言った。


 白チームの目的は大きく分けて三つあった。ひとつは笛吹が危惧したとおり、洋と目のスタミナを奪うことであった。二人のテクニックは十分高校バスケットで通用するものであっても、中学引退後の練習不足はやはり否めない。他のメンバーと比較しても、肩で息をする光景が多く見受けられるようになった。


 その次に挙げられるのが、滝瀬の言ったように、リバウンドでの勝負だった。加賀美、滝瀬、早田と山添、菅谷、目のリバウンド力とを比較した場合、単純な跳躍力、押し負けないだけのパワーで比較すれば、優劣はほとんど無いものの、そこに試合の場数が加わると、どうしても前者の方に分がある。特にチーム一のリバウンド力を誇る加賀美のそれは、他者を圧倒するものがあり、他方で控え組である菅谷のそれは、やはり経験の差を窺(うかが)わせるものがあった。


 そして最後のひとつが洋の覚醒であった。高い位置で当たりを強くすれば、洋の秘めた何かにスイッチが入ると言った日下部の提案は、今のところまだその気配を見せない。早田の言った誘いとは、まさにこのことであった。


「矢島のことはさておき、カベ、これからどうする?」


 早田が言うと、


「どうもしない、このままだ。リバウンド勝負で引き離す」


 と、日下部が言った。だが、一方で、


「しかし、気になるのは笛吹だよな」


 と、加賀美が言った。

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