第二章 新しいユニフォーム 八 それぞれの作戦

 エンドラインの外に出た奥原は、直ぐさまボールを投げた。


 これには青チームの誰もが驚いた。加賀美や早田なら分かるが、まさか滝瀬が……


 しかし、時既に遅し。


 滝瀬は難なくシュートを決めた。


《まずいな》


 笛吹は藤本に向かってT字のサインを出した。


「ピー」


 藤本が笛を吹いた。


「タイムアウト、青チーム」


 この試合、初めてタイムアウトが取られた。


 両チームは分かれて、各々講堂に置いているスポーツドリンクを手にした。


 ゴクゴクと飲み終えると、笛吹が、


「当たりが強くなったな」


 と、息を吐きながら言い、


「じゃあ、狙いはやっぱり目と矢島か」


 と、菅谷が尋ねた。


「とにかく、俺達は飽くまで勝ちに行く。手応えはある。矢島、目、それまで無駄な体力は使うなよ」


 話すのも憚(はばか)られるほど疲れているのか、それとも体力温存のために無駄話をしないのか、何れにしても、洋と目は大きく息をするだけで何も言わなかった。

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