第二章 新しいユニフォーム 八 それぞれの作戦

 一方、それは青チームも同じことであった。パスをゆっくりと回し、最終攻撃は笛吹と目のミドルシュート。単調な攻撃にはなるが、24秒を逆手に取った、スタミナ温存の作戦だ。


 お互い、作戦を立てて臨んだ第三クォーターのようだが、今のところ上手く機能しているのは白チームのようだ。


 スローインが入った。


 白チームはフロントコートで手ぐすねを引いている。


 青チームがゆっくりと敵陣に向かいつつある。しかし、それは自らの意志で向かうのではなく、引き潮に吸い込まれていくかのように見えた。


 それを察したとは思えないが、ここで一・二年の女子から手拍子を交えた応援コールが起きた。


「山並、パパン、山並、パパン……」


 すると、三年生も対抗して、応援合戦は体育館の隅から隅まで響き渡った。


 ドリブルをしながら攻撃を窺(うかが)っている洋は、もちろん試合に集中してはいるが、応援の声が聞こえるのはいいものだと朧気(おぼろげ)に思ってもいた。すごく背中を押されている気がする。しかし、これで調子に乗ってはいけない。作戦通り、試合展開が不利になっても、ここは忍の一字だ。全ては第四クォーターで勝負だ。


 洋は笛吹にパスを出した。


 笛吹はドリブルインを狙った。


 ここで、洋がスクリーン。奥原のマークを外した。


 笛吹、ジャンプシュート。


「ザッ」


 この試合、初めて笛吹のミドルシュートが決まった。


 だが……


 それを見届けるやいなや、滝瀬がゴールに向かって走った。

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