第二章 新しいユニフォーム 八 それぞれの作戦

 エンドラインの外に出た洋は、藤本からボールをもらい受けると、スローインしようとパスをする相手を探した。しかし、やはり白チームのディフェンスは激しく、これではボールを渡すことが出来ない。


 バイオレーションの5秒ルールが迫ってくる。


 清水がポゼッションアローの向きを変えた。


 洋からのスローインを受けたのは、菅谷だった。


「菅谷」


 笛吹が叫んだ。


 菅谷は笛吹にパスを出した。


 笛吹は洋にパスを出した。


 すかさず、日下部が洋をマーク。


 洋はすぐにドリブルしながら走り出した。


 日下部は洋をアウトサイドに入れさせないようにマーク。


 洋が止まった。しかし、ドリブルは尚も継続。


 切り込むのか?


 が、それはフェイント、洋は山添にパスを出した。


 山添は右足を軸に反転。早田のディフェンスを躱(かわ)そうとしたが、諦(あきら)めて笛吹にボールを戻した。


 刻々と時間が過ぎていく。


 笛吹がミドルシュートを放った。


 しかし、ボールはリングの内側に当たり、跳ね返った。


 リバウンド。


 ボールを取ったのは、加賀美だった。


 加賀美はすぐにボールを投げた。その先には既に早田が走っていた。


「ザッ」


 早田のレイアップが決まった。


 三年生の女子から喚声と拍手が起こった。


 第二クォーターは青チームに勢いがあったが、第三クォーターの序盤は白チームに追い風が吹いている。


 これはコートチェンジによるものなのか?


 いや、まず白チームの当たりが強くなったのはどうも5秒ルールを意識しているようだ。アウトサイドでの勝負をさせないようにしているとも思われる。また、第二クォーターまでは1本もシュートを打たなかった奥原がいきなりジャンプシュートを打ったのは、誰もがシュートを狙ってくると言う精神的なプレッシャーを青チームに与えるのが目的なのか?とにかく、はっきり言えることは、何か作戦を立てて、それを意図的に行っていると言うことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る