第二章 新しいユニフォーム 七 ハーフタイム

「目、後半はどうだ?保ちそうか?」


「まあ、何とか」


 返事を聞いて、笛吹は目の顔色を窺(うかが)った。


《こいつ、本音は疲れてるって言いたいんだろうな》


 言葉の内容に勢いが感じられなくなった目に、笛吹は内心そう思った。


「先輩、俺は?」


「お前は手を抜くことを考えろ」


「えっ?」


「体が弱いのなら、弱いなりの動きをしろ」


「あっ、はい」


 笛吹のアドバイスに、洋は新鮮な驚きを覚えた。今までは、皆の足を引っ張らないように、とにかくどうすればスタミナを付けられるか、そればかりを考えていた。


 しかし、生まれ持った体力の差は歴然と存在する。笛吹は手を抜けと言ったが、彼の言いたかったことは、体力を効率よく使えと言うことだろう。


 洋はなるほどなあと思った。


 チアリーダーの面々は、伊藤の話を聞いている最中だ。ハーフタイムの演技に対する注意点を言われているのであろうか。


 洋は夏帆を探した。


 夏帆はユニフォームを着ている先輩の後ろに立って、話を聞いていた。


《あいつもきっと夢中なんだろうな》


 洋はそう思うと、後半も気合いを入れなければと思った。


 青チームは、この後、笛吹を中心に具体的な作戦を練った。


 藤本がホイッスルを吹いた。


 試合開始まで残り3分。


 第三クォーターは果たしてターニングポイントになるのか。


 両チームのメンバーはそれぞれのフロントコートに向かい、ウォーミングアップをやり始めた。

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