第二章 新しいユニフォーム 七 ハーフタイム

「何ですか」


「お前、どうして滝瀬さんがリバウンドを取るのが分かったんだ?」


「……早田さんが打った時のことですか?」


「そうそう」


「僕の背がもう10センチ高かったら、シュートカットは出来なくても、早田さんの視界に僕の手が入ってミスを誘うことが出来たかもしれませんが、実際は僕が跳んで止められるなんて出来ませんから。だから、外した時のことを考えて、早田さんがシュートを打った瞬間、インサイドに寄っただけです」


「じゃあ、俺が負けることを想定したわけじゃないんだな」


「はい。菅谷さんが勝てば、そのままボールをもらえばいいだけですから」


「お前、よくそんな判断がすぐに出来るな」


「チビだから出来るんですよ」


 洋は笑った。厭味(いやみ)のない素直な笑顔だった。


 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。


 背の高い方が圧倒的に有利なバスケットの世界で、チビであることを逆手に取ったプレーが出来る。


 笛吹は第二クォーター終了時点で、洋の凄さを認め始めていたが、菅谷も、そして口には出していないが山添も、じわじわと洋の凄さが分かり始めたようだ。


「後半は山添と菅谷にリバウンドを頑張ってもらおうと思う。攻撃は俺と目でアウトサイドからのシュートを中心に行こう」


「今日は調子が悪いと言ったのは、どこのどいつだ」


「サイドが変わるんだ。何とかなるさ。お前もリバウンド頑張れよ」


「大丈夫だよ。メインにはちゃんと山添がいるから」


「いいぜ。だから、後で何か奢(おご)ってくれよ」


 なかなか無い山添の切り返しに、菅谷はちょっと面食らった。

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