第二章 新しいユニフォーム 七 ハーフタイム
清水自身が言うように、正直言って彼には運動神経もセンスもない。それこそ他人の二倍三倍と、どんなに努力をしても、レギュラーになることを目標に据えているのであれば、彼の努力は完全な徒労に終わる。しかし、努力を続ける意志と姿勢はチームに好影響を与える。ただ、だからと言って、一個人にそれを委(ゆだ)ねてはいけない。大切なのは、それが出来る環境を、指導者が整えることだ。藤本もそれはよく分かっている。バスケットが好きで入部したのだから、何とかしてやりたい。
「清水は目のプレーを見て、どう思った?」
「どうって言われても……」
「たとえば……NBAの誰かに似ていると思わなかったか?」
「……コービー・ブライアントにちょっと似てるかなあって……」
「そうだな……まさかお前の口からコービーが出て来るとは思わなかったな。清水、お前、なかなか面白い観点をしてるな」
と、そこへ、立花が通り過ぎた。
「えっ、あいつまだ走るんだ?」
鷹取の驚きに感化されたように、藤本もちょっと苦い笑いしたが、走るフォームの美しさには《おやっ》と思う関心を抱いた。そう言えば、中学の時は陸上部だと言っていたな、あいつ……
「……じゃあ、矢島を見て、どう思った?」
「NBAの誰かに譬(たと)えてってことですか?」
「それでもいいし、お前の感想でもいい」
「矢島はつかみ所がないと言うのか、トリッキーなパスをすると言う点では、ジェイソン・ウィリアムスっぽいかなあとも思ったんですが……矢島はやっぱり矢島だと思います。後、思ったのは、矢島はスティールが上手いなあって……」
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