第二章 新しいユニフォーム 六 エースの風格

 目はドリブルを止めた。加賀美に背を向けつつ、右に左にとピボットでディフェンスを躱(かわ)そうとした……そしてジャンプ。


 加賀美も体育館の天井にまで届けと言わんばかりに右手をグッと伸ばしてジャンプ。ファウルを取られても構わないつもりだった……


 しかし……


 加賀美の思いとは裏腹に、目(さっか)が自分から離れていく……


「ザッ」


 一・二年の女子から「キャー」とアイドルを応援するような甲高い喚声が起きた。

 加賀美は一瞬何をされたのか分からなかった。が、閃(ひらめ)くようにハッと気がくと、加賀美は自陣に戻っていく目の後ろ姿を見た。


《フェイダウェイ》


 遠のいていく背番号12。が、加賀美には遠のくどころか、とてつもなく大きく見えた、この時がまさにその瞬間であった。

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