サブマリン

第二章 新しいユニフォーム 六 エースの風格

　洋は目を見た。

　目は何も言わず、ただ洋を見ると、敵陣へと向かい始めた。

《負けず嫌いだな》

　洋はそう思った。

　日下部がハーフライン辺りで待ち構えている。

　目は右サイドに。

　加賀美もピタッとマークしている。

　洋は目の方を見たままドリブルしていたが、いきなり逆サイドへとダッシュした。

　日下部は意表を衝かれた。出だしが一歩遅れた。

　洋は止まらず尚も走り続け、ゴール下まで切り込んだ。

　山添をマークしていた早田が洋にマークを切り替えた。

　しかし、洋は更にドリブルを続け、右サイドライン近くまで来た。ここで、ようやく洋は振り向き、その目(め)は山添を捉えた。洋には、山添までのパスコースがくっきりと浮かび上がって見えた。

　早田はしまったと思った。

　そして、早田の危惧したとおり、洋も山添にパスを……

　ところが、洋はドリブルしていた左手だけで目にパスを出した。

　一瞬山添に気を奪われてしまった加賀美の目に対するマークが甘くなった。

　目がドリブルで仕掛けた。

　しかし、加賀美も目に食いついた。絶対に抜かせん。