第二章 新しいユニフォーム 六 エースの風格

「バスケットカウント、イリーガル・ユース・オブ・ハンズ、青12番」


 応援している女子達から喜びと落胆の入り交じった声が上がった。


「あのう、すみません。バスケットカウントって何ですか?」


 鷹取は隣に座っている三年女子に尋ねた。


「何て言えばいいのかな……ボールを持ったオフェンスがシュートをしようとする時に、ディフェンスがファウルをするでしょ。当然、ファウルは取られるんだけど、その時にシュートしたボールがそのままゴールに入ると、それがバスケットカウントって言われるの。あっ、イリーガル・ユース・オブ・ハンズは相手を叩いた時に取られるファウルのことね」


「じゃあ、今のは加賀美さんがシュートを打って、その時に目がファウルをして、ゴールは決まったからバスケットカウントになる……ってことですよね」


「そう言うこと」


「あっ、でも、加賀美さん、まだ何かしてますけど」


「シュート中にディフェンスからファウルを受けるとフリースローが与えられるの。2ポイントエリアからのショットの場合は2回、3ポイントエリアからのショットの場合は3回。でも、この場合はシュートが決まったから、1回。そう言うルールなの」


「なるほど。ありがとうございます」


 と言うと、鷹取は再びコートに目を戻した。


 加賀美がフリースローを放った。


 ボールは綺麗な放物線を描き、


「ザッ」


 と音を立てた。


 洋は落ちたボールを拾うと、そのままエンドラインの外に出た。待っている笛吹にパスを出そうとすると、


「矢島」


 と、目が声を掛けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る