第二章 新しいユニフォーム 六 エースの風格

 しかし、早田はここでバックロールターンを使用、そのままジャンプシュートを狙った。


 が……


 その瞬間、早田の手からボールが消えた。それこそ、別の空間に移動でもしたかのように。


 一体何が起こったのか?


 早田がそれを理解した時は、既に洋がゴールに向かってドリブルしていた。


 このままでは、またしても洋にカウンターを許してしまう。


 日下部と奥原は全力で戻った。


 しかし、なぜか洋はそのままシュートにはいかず、フリースローライン辺りで足を止めた。


 なぜだ?


 と、そこへ今まで全くモーションを見せなかった目が脱兎(だっと)の如く走って来た。


 虚(きょ)を衝(つ)かれた加賀美はマークするのが一歩遅れた。


 フリーになった目が走ってくる。


 洋は難なく目にパスを出した。


 パスを受けた目は、そのままステップを踏んで、


「バーン!」


 左手でダンクを決めた。


 一・二年女子の黄色い喚声が狂喜乱舞した。


 シュートを決めた目が矢島のもとへ行った。


「俺が来るって、よく分かったな」


「今のも試したいことだったんだろ」


「……そうだな」


 二人はそう話しながら自陣に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る