第二章 新しいユニフォーム 六 エースの風格

「……俺と菅谷でリバウンドを頑張れば、多分勝てる」


 不断は余り自分の意見を言わない山添も珍しく強気に言ってきた。


「全くさあ、何でこんな時に限って、お前は調子が悪いんだよ」


「うるせいよ。大体、お前が点を取れたのは矢島のお陰だろ」


「それは違いますよ。目が一発目に豪快なダンクを決めたからですよ。あれで、どうしても目をマークせざる得なくなりましたからね」


「それで菅谷のマークが甘くなったのは確かだが、それを見逃さないお前の視野の広さも大したもんだよ」


 と言うと、笛吹は《自分の凄さをもっと自覚してもいいと思うんだけどな》と胸の内で思いつつ、


「とにかく、攻撃は目を中心にして行こう。今日の俺は調子が悪い」


 と言った。


「あっ、認めやがった」


 菅谷が突っ込んだ。しかし、その声はとても弾(はず)んでいた。


「目を攻撃の中心に据えるのは僕も賛成ですが、やっぱり山添さんの攻撃もないと……」


「いや、第2クォーターは俺に任せてくれ」


 と、洋の意見を目が遮(さえぎ)った。


「あの二人に滝瀬さんも加わった高さは、間違いなく全国レベルだ。だから、俺一人にやらせてくれ」


 目の挑戦的な言葉を聞いて、菅谷は、


「面白そうだな」


 と、笑った。


「矢島、色々と試してみたいのは、お前だけじゃないんだよ」


 洋が目(さっか)を見上げた。睨(にら)むような眼差(まなざ)しで白チームを見る目(さっか)に、洋はただ一言、


「決めろよ」


 と言った。

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