サブマリン

第二章 新しいユニフォーム 五 練習試合

　山添が日下部のドリブルコースに入った。

　加賀美が一瞬フリーになった。

　菅谷は加賀美に対してもディフェンスが出来るよう、滝瀬から少し離れた。

　目は菅谷のカバーを考え、早田からやや離れた。

　日下部はそれを見逃さなかった。

　絶妙なパスが早田に通った……

　しかし、次の攻撃を仕掛けていたのは、

「速攻」

　と叫んで走り出した、洋であった。小さいながらも、洋の押し上げは速い。洋はあっという間にゴールに迫った。そして、そのままランニングシュートの体勢に入った。

　が……

　早田の戻りが予想以上に早く、洋のレイアップがカットされようとした……

　その瞬間……

　洋は左手に持っていたボールを右手に移動、そこからふわっとしたパスを目に放った。

　目はボールを両手でキープ。ノーマークでダンクを決めた。

　応援している一・二年の女子から大喚声が沸き起こった。

　記録上、スティールを行ったチームに対しては１スティールが記録され、スティールをされたチームには１ターンオーバーが記録される。

　ただ、このプレーを洋のスティールと捉(とら)えるのか、日下部のターンオーバーと捉えるのかは意見の分かれるところかもしれない。

　しかし、日下部自身は明らかにパスカットされた、つまり、洋の予測が自身のプレーを上回っていたと思っていた。

　奥原がボールを拾うと、そのままエンドラインの外に出て日下部にスローインをした。

　日下部はコートに戻った奥原にボールを返した。

　奥原がドリブルをしながらゆっくりとフロントコートに近づいて行く。

　洋が奥原を待ち構えている。

　日下部は、そんな洋の横顔を見ながら、右四十五度の位置に向かっていた。